“消費者の声”が商品づくりを変える

今回は、釜めしの素やタイフードシリーズなどで知られるヤマモリ株式会社様の企業インタビューを実施しました。インタビューを通じてお伺いした、「みんなのプロジェクト(以下、みんプロ)」をどのように活用し、実際のマーケティングリサーチにどう結びつけているのか、実践事例をご紹介します。
創業から100年以上、和の味づくりを支えてきたヤマモリ株式会社。釜めしやタイカレーシリーズなど、家庭で手軽に本格的な味を楽しめる商品を展開しています。
今回は、同社の人気商品「釜めしの素」シリーズにおけるリニューアルの背景と、そこで活用された『みんなのプロジェクト(以下、みんプロ)』の活用方法について、商品企画担当のお二人にお話を伺いました。

「みんなのプロジェクト」導入のきっかけと活用の歴史
ヤマモリ株式会社がみんプロを使い始めたのは2010年頃。
「消費者の声が聞けるサービスがある」と紹介されたことがきっかけだったといいます。
「以前は“良いものを作れば売れる”という考え方でしたが、ここ数年で、消費者目線での商品開発を重要視するように変わりました」(弓矢様)
この方針転換を受けて、みんプロは社内でも積極的に活用されるようになっていきました。
「操作が簡単で、短期間で意見が集まるのが魅力です。たとえば新商品の開発時、パッケージやネーミングの確認が急ぎで必要になった際、一晩で170件もの回答が集まりました。本当に助かっています」(進谷様)
“今日困ったら、明日には聞ける”というスピード感と、社員誰もが使いやすいシンプルな設計が、みんプロを現場に自然と根付かせていったようです。
「みんなのプロジェクトとは?」
ここで少しだけ、今回の事例で活用されている“みんプロ”についてご紹介します。
みんプロは、主に30〜60代の生活者から“本音”の声を引き出せるマーケティングリサーチサービスです。
以下のような特長があります。
自由回答の質が高い
本音ベースの丁寧なコメントが多く、定性調査にも活かしやすい。
生活者の声を短期間で収集
商品開発・パッケージ評価・コンセプト検証など、さまざまなフェーズで活用可能。
社内の誰でも使いやすい設計
マーケティング部門に限らず、商品企画や営業など幅広い部門での運用が可能。
モチベーションの高い参加者
謝礼目的ではなく、“企業との共創体験”に価値を感じているため、意欲的な協力が得られる。


釜めしリニューアルで活きた、消費者の声と調査データ
“炊飯器に加えるだけ”で手軽に調理できるヤマモリの釜めしシリーズは、長年にわたり多くの家庭に親しまれてきたロングセラー商品です。
最近特に活用が広がったのが、釜めしシリーズのリニューアルタイミング。従来の松茸風味の釜めしは、レビューでは好評だった一方、売場での売れ行きには課題がありました。
「“松茸の味が目立たない”“他の商品と違いが分かりづらい”と、セールスや流通から声が上がっていました。そこで、パッケージと味の印象がどう捉えられているのかを調査することにしました」(進谷様)
調査では、パッケージを見た印象や、試食後の満足度、価格の妥当性まで幅広く意見を収集。特に自由記述の中に、重要な改善ヒントが多く含まれていました。
「“もっと具材が欲しい”“香りをもう少し強くしてほしい”など、自由回答を読み込んで初めて見えてくる声がたくさんありました」(弓矢様)
こうしたフィードバックを元に、パッケージや商品設計を見直し、価格設定もデータをもとに経営層と合意形成したことで、商品開発をスムーズに進めることができたそうです。
「実際にお客様に聞いた結果なので、“こういう声がありました”と社内外で伝えやすく、自信を持って提案できます」(進谷様)

中央がリニューアル後の松茸釜めし。左が「旨みだし きのこ」、右が「旨みだし 地鶏」。
スピーディーに調査を繰り返すことの価値
アンケートは一度で終わらせず、異なる設問設計や条件で再度調査を行うことで、より精緻なインサイトが得られるといいます。
たとえばデザイン案の比較では、最初に評価されたものが「黒を基調としたシックなデザイン」だったにもかかわらず、売場に並べた画像を用いて再調査すると結果が逆転。
「売場で目立たないかもしれないという仮説を、改めて“陳列環境を想定した形”で検証したところ、別の案が選ばれたんです」(弓矢様)
こうした繰り返しの調査も、みんプロなら柔軟に実施可能です。

左がリニューアル前の「松茸の味 炊き込みきのこごはん」、右がリニューアル後の「香り松茸 きのこごはん」。
みんプロメンバーについて感じていること
みんプロのメンバーについて、ヤマモリ様はこんな印象を持っていました。
「ヤマモリの商品に好意的な方が多く、どんな調査でも率直な意見を寄せていただけるので、とても信頼しています。商品をよくしたいという姿勢が伝わってきますし、リニューアルを重ねるたびに、メンバーさんとのつながりを実感します」(進谷様)

今後、みんプロメンバーに期待すること
「釜めしは、忙しい現代人にとっても便利な商品。高齢のファンの方々だけでなく、若い世代や子育て家庭にも広げていきたいんです」 と語るお二人。
みんプロには今後も、幅広い世代の声を集めていく期待を寄せています。
「できれば、スーパーの売場に立ったような“リアルな気持ち”で答えてもらえると、より精度の高いデータになると感じています。本音を引き出せる設問や、状況設定の工夫も大切にしていきたいです」(進谷様)
また、何度も似たような質問に丁寧に回答してくださる姿勢には、深い感謝の気持ちを抱いているとのこと。最後に、調査に参加してくださった方への感謝の言葉も寄せてくださいました。
「皆さんのご協力があって、今回の商品が完成しました。展示会でも“デザインがよくなったね”と評価をいただいていて、本当に助けられています」(進谷様)
今後は、オンラインだけでなく、グループインタビューなどを通じて、直接メンバーの方と対話できる場もつくっていきたいと語ってくださいました。
ヤマモリ担当者さんのイチオシ商品!
タイフードシリーズは、今年で発売25周年を迎えたヤマモリ様の人気商品。
中でも「カオソーイ(チェンマイ風カレーヌードル)」は、今回インタビューをさせていただいた進谷様の個人的なおすすめでもあります。
「美味しさには自信がありますが、“カオソーイ”という名前の知名度がまだ低くて…。どうすれば魅力が伝わるか、引き続き考えていきたいです」(進谷様)
ぜひタイフードにチャレンジをして、みんプロから感想をお伝えしてみてはいかがでしょうか。

取材後記
今回の企業インタビューを通じて、調査の“実施数”ではなく、“深さと継続性”こそが信頼と実績につながるのだと改めて感じました。
ヤマモリ様のように、調査結果をしっかりとデータとして活用し、生活者の声に真摯に向き合いながら商品づくりを進めていく姿勢は、これからのマーケティングリサーチのひとつの理想形と言えるかもしれません。
商品開発において、“つくり手の想い”と“生活者の実感”をどうすり合わせるかは、簡単なようでいて難しい課題です。
ヤマモリ様が『みんプロ』で取り組まれている開発プロセスからは、生活者と一緒に商品を育てていこうとする実直な姿勢が伝わってきました。
生活者の声を、正面から受け止める。そこにこそ、新しい発見と価値があるのかもしれません。

