旅行の計画、AIをプランナーとして使っていますか?

——調査から見えた、旅行計画における生成AIの使われ方
「予算はこれくらい、2泊3日、子どもも一緒」。条件を並べて、AIに宿を探してもらう。旅行の計画で、そんな使い方をしたことはないでしょうか。
旅行の準備は、決めごとの連続です。行き先、日程、宿、交通手段、現地の回り方。しかも同行者の事情によって、条件はいくらでも増えていきます。
では実際のところ、生活者は旅行の計画のどこでAIを使い、何を相談し、その提案をどう扱っているのでしょうか。
今回は「旅行の計画・手配」をテーマに、普段AIを利用していて、自分で旅行の計画・手配をする人への調査から、生活者のリアルなAI活用実態を明らかにしました。
📌 この記事のポイント(Executive Summary)
- 【普及】 普段AIを利用している人のうち、旅行の計画でもAIを使った経験がある人は69.1%(本調査 n=2,014)。18〜29歳男性は85.7%、60代でも半数を超える。
- 【用途】 使う目的の上位は「条件に合う宿泊施設・航空券を探す」45.0%、「効率的な旅程表を作成」44.3%。「漠然とした希望から行き先を提案」32.1%を上回る。
- 【検証】 AI利用後はGoogle検索52.7%・Googleマップ46.0%・旅行予約サイト45.5%で確かめられ、「AIの情報だけで判断する」は2.3%。
- 【課題】 期待の1位は「リアルタイムの空き状況や価格変動を反映した提案」54.9%。不満の1位は「提案が実在しない・予約不可」28.1%。求められているのは事業者側が持つ最新情報。
なぜ今、この調査を行ったのか
生成AIの普及により、生活者の情報探索は大きく変わりつつあります。なかでも旅行は、「行き先を探す」「条件に合う宿を絞る」「効率的に回る順番を考える」といった、複数の条件を同時に扱う検討が必要な領域です。
一方で旅行は、金額も大きく、日程の変更もききません。AIの提案をそのまま受け入れるとは考えにくい領域でもあります。
そこで今回、旅行の計画・手配を行う人を対象に、AIが「相談する・出会う・確かめる・選ぶ/予約する」の各段階にどう関わっているかを調査しました。

普段AIを使う人の69.1%が、旅行の計画でも使っている
まず、AIがどれくらい使われているのかを確認します。

事前調査では、普段AIを利用している人が55.5%でした(全国18〜69歳の男女 n=5,951)。
本調査は、この「普段AIを利用している人」のうち、一定の旅行経験があり、旅行の計画・手配に関わる人2,014人が対象です。そのなかで、旅行の計画でもAIを利用した経験がある人は69.1%。「よく利用する」「ときどき利用する」「利用したことがある」の合計です。
性年代別に見ると、最も高いのは18〜29歳男性の85.7%。次いで同女性78.9%、30代男性78.1%、同女性73.8%と続きます。逆に最も低いのは50代女性55.4%、40代女性55.0%でした。
年代が上がるにつれて下がる傾向ははっきり出ていますが、それでも60代は男性54.5%・女性56.2%と、半数を超えています。
もうひとつ目を引くのが、男女差の出方です。40代は男性70.7%に対して女性55.0%で、15.7ポイントと全セル中で最大の差がつきました。30代から40代にかけての下がり方が、男性7.4ポイントに対し女性18.8ポイントと大きいためです。一方、60代だけは女性56.2%が男性54.5%をわずかに上回り、男女の関係が逆になっています。
普段AIを使っている人のなかでは、年代を問わず旅行の計画にも使われている、ということです。
使う目的は「条件に合う宿」と「旅程表」
旅行の計画でAIを利用した人に、その目的を聞きました。

上位3つは、いずれもすでにある程度の枠が決まったうえで、その中身を詰める目的です。一方、「漠然とした希望から行き先を提案してもらう」は32.1%。3人に1人が使っており、決して少なくはありませんが、上位3つとは差がついています。
行き先の相談にも使われていますが、それ以上に多いのは、条件を示して段取りを詰める使い方でした。
どんな旅行の計画に使われているのか
別の設問で、AIを使って計画した旅行そのものの目的も聞いています。

最も多いのは「観光のため」57.6%、次いで「地元のグルメを食べるため」45.0%、「宿・ホテルでのんびりするため」36.6%。観光し、土地のものを食べ、宿で過ごす。並んでいるのは、旅行の定番といえる目的です。AIは、こうした一般的な旅行の準備に使われています。
計画のどの場面で、どの情報源が使われているのか
候補を探すとき、比較するとき、旅行先を決めるとき。計画の進み方に沿って、使われる情報源を聞きました。

全体では、主要な情報源はGoogleマップと旅行予約サイトで、ChatGPT・Geminiは1割前後ですが、利用が最も多くなる場面別でみてみると、情報源によって分かれます。
- 「候補を探すとき」が最も多い:Googleマップ46.8%、Instagram24.6%、YouTube24.3%
- 「比較するとき」が最も多い:旅行予約サイト36.9%、ChatGPT14.7%、施設の公式サイト14.0%、Gemini11.4%
AIは、旅行予約サイトや施設の公式サイトと同じ、候補を絞り込む場面のグループに入っています。
生活者はAIに、何と打ち込んでいるのか
実際にAIへ何と打ち込んだのかを、自由回答で聞きました。

5例すべてが、条件の列挙から始まっています。 人数、予算、日数、季節、歩ける距離、交通手段の有無、営業時間。おすすめを尋ねる前に、自分の事情のほうを先に渡しています。
なかでも目立つのが、移動に関する条件です。5例のうち3例が「あまり歩かなくていい」「空港から車なしで」「ホテルから歩いて行けて」と、歩く距離や交通手段を条件に挙げていました。どこに何があるかより、そこへ自分たちが行けるかどうかを気にしている、ということだと思います。
共通して言えるのは、これらが検索窓には入れにくい条件だということです。「あまり歩かなくていい」「空港から車なしで」「夜遅くまでやっている」。キーワードに分解しにくい情報を、そのままの言葉で渡せる。ここにAIが使われる理由があります。
そして、こうした条件に答えるために必要な情報——施設までの距離、移動手段、営業時間、客室のタイプ——は、泊まるところなら宿の事業者が持っている情報となり、いかにAIに探し当ててもらうかが重要になってきています。
AIで「思いつかなかった行き先」に出会えるかも
旅行計画を決めるために内容を詰めたり比較に使われているAIですが、評価を聞くと別の側面も見えてきます。

1位は「スケジュール(旅程)作成の手間と時間が大幅に省けた」45.0%、2位は「条件に合う情報をピンポイントで簡潔にまとめてくれた」41.0%。どちらも、自分でやると時間のかかる作業を代わりにやってもらえた、という評価です。
そこに3位として入ってきたのが、「自分では思いつかなかった行き先を発見できた」40.7%でした。1位とは4.3ポイントしか離れていません。段取りを任せるつもりで使ったAIから、知らなかった候補が返ってきたという評価が、手間が省けたという評価と同じくらいの割合で挙がっています。
なお「わからない」と答えた人は5.7%にとどまり、利用した人のほとんどが何かしらの手応えを挙げていました。
ただし、この数字の読み方には注意が必要です。これはAI利用の評価としての自己申告であり、実際にその行き先を訪れたことや、AIが訪問を生んだことを示すものではありません。
それでも、AIが発見の機会をくれて、候補の幅を広げる働きをしているということだと考えます。
AIで完結はしない。「AIだけで判断する」は2.3%
AIから提案を受けたあと、生活者はどう動いているのでしょうか。

上位3つは「Google検索で詳しく調べる」52.7%、「Googleマップで場所・口コミを確認する」46.0%、「旅行予約サイト(じゃらん、楽天トラベルなど)を見る」45.5%。7ポイントの幅に3つが収まっています。検索で言葉を、地図で場所を、予約サイトで空きと価格を。確かめる先が、性格の違う3種類に分かれているのが分かります。以下、旅行クチコミサイト25.9%、SNS18.0%、旅行会社の店頭やWEBサイト17.5%と続きます。
そして「AIの情報だけで判断する」は2.3%でした。50人に1人という水準です。
誰かと一緒に行く旅の場合、予算や日程をある程度決めて計画するので、AIの提案をうけて、自分で確かめる傾向があります。これは9月に実施した健康・美容商材の調査でも同じ傾向が出ています。特に旅行計画では、比較、調べる範囲をしぼってくれる相手として使われる傾向があるようです。
旅行やホテルなど事業者は、AIに推薦してもらい、さらにその後、検索・地図・予約サイトで比較され、そこで選ばれて予約につながるという流れになります。旅行業界においてもAIが読みに来てくれる情報の準備提供が益々重要になりそうです。
AIに期待されている機能
今後もAIを利用したいと答えた人に、どんな機能を期待するかを聞きました。

1位は「リアルタイムの空き状況や価格変動を反映した提案」54.9%で、唯一、過半数が挙げた項目です。2位「位置情報や地図アプリと連動したルート案内・ナビゲーション」42.5%、3位「実際の予約サイトと連携し、そのまま予約・決済まで完了できる機能」42.1%が続きます。
4位の「自分の過去の旅行履歴や好みを学習した精度の高いレコメンド」は29.0%、5位の「現地での急なトラブルや予定変更に対する即座の代替案提示」は20.5%で、上位3つとは13ポイント以上の開きがあります。
上位3つに共通するのは、いま実際にどうなっているかを押さえた提案を求めている点です。空いているか、いくらか、どこにあるか、そのまま予約できるか。求められているのは、AIが現実のデータとつながっていることでした。
期待と不満は、同じところを指している
一方で、現時点でAIに感じている不満も聞いています。

「提案が実在しない・予約不可」28.1%、「パーソナライズが浅い」27.8%、「情報が古い・事実と異なる」26.9%。上位3つが1ポイント強の差でほぼ横並びでした。
※期待(n=1,670)と不満(n=1,392)は回答対象者が異なる別設問です。1本の経路や差分として読むことはできません。
それでも、両者が指している先は重なっています。期待の1位「リアルタイムの空き状況や価格変動を反映した提案」54.9%と、不満の1位「提案が実在しない・予約不可」28.1%。同じことを、期待の側と不満の側から言っているように見えます。
これは、AIの賢さの問題ではありません。空き状況、価格、営業時間、客室のタイプ。AIが答えられずにいる情報の多くは、事業者側が持っている情報です。 それがAIから参照できる形で置かれているかどうかが、提案に載るかどうかにつながってきます。
5章で見た自由回答を、思い出してみてください。「あまり歩かなくていいところ」「夜遅くまでやっている」。生活者は、こうした条件で相談していますので、旅行者の視点をベースに情報を置いておくとAIからみても有益な情報、差別化要素として役に立ちます。
旅行事業者への示唆
ここまでの結果をふまえて、旅行事業者が取り組めることを3つ挙げます。
① 「検索される旅行情報」から「相談したとき候補になる旅行情報」へ
AIが条件や日程を起点に行き先・宿を提案するようになると、求められる情報も変わります。「何があるか・どんな設備か」の説明に加えて、「誰の、どんな旅行に、なぜ向くのか」まで説明できる状態にしておく。人数・予算・時期に対して「自分たちの場合はこうなる」が分かる形にしておく。一律の訴求から、条件に答える情報設計への転換です。
② 一次情報をAIから参照できる形に置く
期待と不満が同時に指していたのは、空き状況・価格・営業時間といった、鮮度のある一次情報でした。これは外からは作れません。自社サイトや予約サイト上で、正確で最新の情報を、機械にも読める形で置いておくこと。SEO(検索エンジン最適化)に加えて、AIに正しく引用・推薦されるための最適化(AIO)の考え方が必要になります。
③ AIで生まれた「行きたい」を、予約・現地接点で取りこぼさない
AIで知った施設が、検索・地図・予約サイトですぐ見つかるか。似た選択肢との違いが分かるか。空き状況・価格・口コミ・アクセスを確かめられるか。そのまま予約まで進めるか。見つけられる・比べられる・確かめられる・そのまま予約できる。 この4つがつながっていないと、AIが生んだ関心は途中で低下する恐れがあります。
おわりに
「旅行計画で、AIをどのように使っているのか」
今回の調査では、AIは行き先を決めてもらうためというより、条件を示して段取りを詰めるために使われていました。
とすると、旅行を扱う事業者は、人数・予算・時期・移動手段といった利用者視点を想定した、「貴方の場合はこう使えます」と答えられる情報を準備しておく必要があると考えます。
相談の相手がAIになっても、答えを持っているのは事業者ですね。
📊 調査概要
- 調査名: 旅行計画AI利用調査
- 調査対象: 事前調査=全国18〜69歳の男女/本調査=普段AIを利用しており、一定の旅行経験があり、旅行の計画・手配に関わる人
- サンプル数: 事前調査 n=5,967/本調査 n=2,014 ※設問により回答対象者・サンプル数は異なる
- 調査方法: インターネット調査
- 調査期間: 2026年8月
- 調査機関: 株式会社オノフ
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