BtoB企業のためのAIO|AIに「選ばれる」時代のマーケティング戦略

こんにちは、オノフのグロースマネージャーの和田です。本記事は、営業の現場で得た所感を交えながらBtoB企業のためのAIOの将来像について書いています。
この記事の要点
- AIOとは、生成AI検索において自社の情報が引用・推薦される状態をつくる最適化施策のこと。今後、BtoBでは、経営層・現場担当者など複数の意思決定者が別々にAIへ相談する点がBtoC以上に重要になることが予測される。
- BtoBの購買検討は生成AIへの相談から始まるケースが増え始めており、比較検討の初期段階で自社が言及されなければ、稟議・決裁のテーブルにすら乗らないリスクがある。
- BtoBのAIOで特に重要なのは、決裁者・現場担当者それぞれが投げる質問に応じたコンテンツ設計と、営業資料や導入事例など社内に眠る一次情報が資産になる。
自社の商品やサービスについて、ChatGPTやGoogle AI Overviewに聞いてみたら、競合他社の情報しか出てこなかった。そんな話題が私の周りでも増え始めています。
これまでBtoBの購買検討は、検索エンジンで情報を集め、複数社の資料を比較し、社内で持ち帰って議論するというプロセスが一般的でした。しかし近年、その入り口が少しずつ生成AIに置き換わりつつあります。担当者はまず生成AIに「〇〇を導入したい、どんな選択肢があるか」と相談し、そこで提示された情報を参考に検討を進めるケースが増えてきているのです。
私はこの変化を、一時的なトレンドではなく購買行動の大きな変化だと考えています。理由は単純で、生成AIに聞くほうが速く、比較の手間が減るからです。一度この便利さに慣れた担当者が、以前のような地道な検索・比較のプロセスにわざわざ戻るとは考えにくいと感じています。音声認識の精度も向上しており、将来的には文字のタイピング要らずでAIに聞くようになるのではないでしょうか。
この変化にどう対応するかが、これからのBtoBマーケティングにおける重要な論点になっています。その対応策として注目されているのが「AIO(AI Optimization)」です。今回は、AIOの基本的な考え方と、BtoB企業が具体的に何から着手すべきかを、私自身の現場での気づきも交えながら整理してご紹介します。
AIOとは何か
AIOとは、ChatGPTやClaude、Google AI Overviewといった生成AI検索において、自社の情報が引用・推薦される状態を意図的につくり出す最適化施策のことです。GEOやLLMOといった呼び名も見かけますが、呼び方の違いです。
私がBtoB企業を支援していて特に意識しているのは、AIに相談する人が一人ではないという点です。BtoCであれば「検討している本人」がAIに聞いて終わりですが、BtoBの場合、経営層は「投資対効果の観点でどの会社が妥当か」と聞き、現場の担当者は「機能面・実装面でどの会社が現実的か」と聞く、というように、立場によって質問の切り口も、AIに期待する答えの中身も変わってきます。
BtoBの購買は、複数の担当者や決裁者が関わり、比較検討にかける期間も比較的長くなる傾向があります。だからこそ、情報収集の初期段階で生成AIに相談する機会が増えているのです。この初期段階で、経営層向け・現場向けいずれの角度からもAIの回答に自社が出てこなければ、その後の比較検討にすら加われないおそれがあります。AIに勧めてもらえる会社しか比較対象に入らないという状況は、業種によってはすでに現実になりつつあると感じています。
つまりAIOは、単なる技術的な施策ではなく、商談の機会そのものを左右する経営課題としても捉えるべきテーマになってきている、というのが私の考えです。
SEOとAIOはどう違うのか
両者を比較すると、次のような違いが見えてきます。
| 項目 | SEO | AIO |
| 主な目的 | 検索結果での上位表示・クリック獲得 | AI回答内での引用・認知獲得 |
| 最適化対象 | キーワード、内部リンク、ページ構造 | AIが参照する知識ベース、Q&A構造、信頼性 |
| ユーザー行動 | リンクをクリックしてページへ遷移 | AI回答内で完結 |
| 評価指標 | 順位、CTR、オーガニックトラフィック | 自社言及率、引用元、推奨頻度 |
一言でいえば、SEOはページに来てもらうための最適化であり、AIOはページに来る前からAIに正しく語ってもらうための最適化です。SEOではユーザーがリンクをクリックして自社サイトに訪れて初めて情報が伝わりますが、AIOではAIの回答内で情報が完結します。ユーザーが自社サイトに一度も訪れないまま、候補先として認識されたりする可能性があるということです。
とはいえAIOはSEOの延長線上にある考え方であり、ユーザーの検索意図を理解し、企業やサービスの本質を捉えた良質で独自なコンテンツをつくるという、SEOでずっと大切にされてきた基本は、AIOでも変わりません。これまで積み上げてきたSEOの知見の多くは、そのままAIOにも活きるというのが正しい認識であり、既存の施策に「AIに引用されやすい要素」を加えていくのが、現実的なアプローチといえるでしょう。

BtoB企業が取り組むべき5つの対策

1. 現状把握:決裁者と現場担当、それぞれの質問でAIに聞いてみる
まずはChatGPT、Claude、Geminiyなどの主要な生成AIに、自社の主要キーワードで質問を投げてみましょう。ポイントは、一種類の聞き方で終わらせないことです。「〇〇(自社が提供するサービス領域)を検討している、おすすめの会社は」という現場担当者的な聞き方に加えて、「〇〇導入の費用対効果が高い会社は」といった決裁者・経営層目線の聞き方も試してみると、見える情報が変わってきます。
私はこのステップが重要だと考えています。理由は、多くの企業が「自社がAIにどう見えているか」を一度も確認しないまま施策を検討し始めてしまうためです。しかも、現場向けの聞き方でしか確認していないと、決裁者が実際にAIへ相談したときの見え方を見落とすことになります。現状把握を飛ばすと、的外れな対策に時間を費やすことになります。
2.「とは」記事の整備:定義記事はAIに引用されやすい
自社サービスに関連する「◯◯とは」といった定義・説明記事を整えることは基本です。そうした基本コンテンツをAIが引用しやすい構造に整えます。抽象的な説明にとどまらず、自社ならではの視点や事例を盛り込むことで、他社の同種の情報と差別化され、引用されやすいコンテンツになります。
この「とは」記事は最も費用対効果が高い着手ポイントです。すでに社内にある説明資料をベースに手を入れるだけで済むケースが多く、ゼロから作るコンテンツより着手のハードルが低いコンテンツです。
3. コンテンツ構造の最適化:AIが拾いやすい形に整える
質問形式の見出しを多用したFAQ形式は、AIが情報を拾いやすい形式です。見出し直下に60〜140文字程度で要点をまとめた宣言文を置いたり、関連情報をカテゴリページで束ねたりすることも、AIによる情報の抽出・引用のしやすさにつながります。
実際、この記事自体も見出しの直下に要点となる一文を置く形に構成しています。私は、こうした「型」を意識するだけでAIからの引用されやすさは大きく変わると考えており、文章力よりも構造の設計が重要だと考えています。
4. 決裁者に響く証拠づくり:営業現場の資産を転用する
BtoBのAIOで私が最も重視しているのが、この4番目の対策です。BtoBの決裁者は「導入してどれだけの成果が出るのか」を厳しく見るため、抽象的な実績アピールではなく、数値やプロセスを伴った具体的な証拠が必要になります。導入前後の変化を数値で示した事例、業界特有の課題への対応実績、第三者からの評価などが該当します。
私が営業として感じるのは、こうした証拠の多くはすでに営業部門の中に存在しているということです。提案書、RFPへの回答、失注理由の分析、商談で担当者から実際に聞かれる質問とその回答。これらは新しく取材しなくても、営業チームに一度ヒアリングするだけでコンテンツの種になります。ゼロから情報をつくるより、社内の営業資産をAIが引用しやすい形に「翻訳」する方が、着手のハードルは低いと私は考えています。
5. 継続的な観察と改善:一度整えて終わりにしない
毎月同じ質問セットでAIに問いかけ、自社言及率や競合言及率、引用元を計測しながら、コンテンツを改善し続けるサイクルをつくります。AIの回答は日々アップデートされるため、一度整備して終わりではなく、継続的に観察し、手を入れ続ける姿勢が求められます。
私は、AIOを「運用」として捉えることが重要だと考えています。一度きりのプロジェクトとして予算化してしまうと、数ヶ月後には効果が薄れてしまう懸念があります。
検討に関わる複数の意思決定者を意識したコンテンツ設計
私がBtoBのAIOを考えるうえで、SEOの延長だけでは足りないと感じる最大の理由がここにあります。BtoCであれば意思決定者は基本的に一人ですが、BtoBの購買には、投資判断をする経営層、機能や実装面を評価する現場担当者、実際に日々使う利用者など、役割の異なる関与者が複数存在します。
それぞれがAIに投げる質問は異なります。経営層は、投資対効果や導入リスク、他社の導入実績を聞く傾向があり、現場担当者は、機能の詳細や既存システムとの連携、サポート体制を聞く傾向があります。私は、自社のコンテンツがこのどちらか一方の質問にしか答えられていないケースが多いと感じています。
具体的な対応としては、経営層向けにはROIや導入事例のサマリーを、現場担当者向けには機能比較や導入プロセスの詳細を、それぞれ独立したコンテンツとして用意し、AIがどちらの質問にも根拠をもって答えられる状態をつくることが重要だと私は考えています。
取り組むうえでの注意点
- 誇張や根拠のない断定を避ける:BtoBの担当者は情報を吟味する目が厳しく、不正確な情報は信頼を損ないます。
- 専門用語に偏りすぎない:検討初期の担当者は必ずしも専門家ではないため、平易な言葉での解説も必要です。
- 短期成果を求めすぎない:AIOは中長期的な信頼構築のための施策であり、即効性を期待しすぎないことが大切です。
私がこれまで支援してきた中でも、最も多い失敗パターンは3つ目の「短期成果を求めすぎる」ことです。1〜2ヶ月で言及率が劇的に変わることは稀で、半年〜1年単位の取り組みだと捉えておくのが現実的だと考えています。
よくある質問
Q. 決裁者向けと現場担当者向け、どちらのコンテンツを優先すべきか
私は、まず現状把握の結果を見て「どちらの質問でより自社が言及されていないか」から優先順位をつけることをおすすめします。多くのサイトでは、機能面の情報は充実している一方、決裁者が求めるROIや導入実績のまとめが手薄なケースが目立つ印象です。
Q. 営業チームの協力なしでもAIOは進められるか
技術的な対応だけであれば可能ですが、私は営業チームの協力を得たほうが圧倒的に早く、質の高い着手ができると考えています。決裁者に響くエビデンスの多くは、日々の商談の中に営業チームがすでに持っているためです。
Q. 効果が出るまでどれくらいかかるのか
案件によって差はありますが、私の実感では、明確な変化を感じられるまで数ヶ月〜半年程度を見ておくのが妥当です。BtoBは検討期間自体が長いため、中長期的な信頼構築の施策だと捉えることをおすすめします。
まとめ
AIOは、AIが情報を評価する情報のレイヤーで自社を選択肢に残すための施策です。ただし、AIに引用されることはゴールではなく、あくまで検討の入り口にすぎません。そこから先、実際に契約に至るかどうかを最終的に決めるのは人間です。
担当者はAIの回答を見た後で、公式サイトを訪れたり、導入事例を確認したり、社内で説明できる材料を探したりしながら、納得したうえで意思決定をしていきます。
つまりBtoB企業に求められるのは、AIの回答に出てくるための材料づくりと、サイトを訪れた担当者が「これなら安心して検討できる」と納得できる情報を自社サイトに用意しておくこと、その両輪だと私は考えています。どちらか一方だけでは、その先の商談にはつながりません。
AIOは一朝一夕に成果が出る施策ではなく、中長期的な信頼構築の取り組みです。まずは自社が生成AIにどう語られているか、実際に質問を投げて確認するところから、少しずつ着手してみてはいかがでしょうか。
AIO時代のBtoBマーケティング支援はオノフへ
オノフのAIO支援は、リサーチを起点に、自社ならではの一次情報の発掘からコンテンツ設計、Webサイトへの実装・改善までを一気通貫で行います。
生成AI上での自社・競合の見え方を分析し、「AIに選ばれる」ための情報発信を支援します。AIO対策をどこから始めればよいかわからない企業様も、ぜひお気軽にご相談ください。