AIで見つけて、Googleマップで確かめる。「お店選びジャーニー」の再編


「あなたのお店を初めて訪れた人は、何でお店を知りましたか?」
この問いに、いま自信を持って答えられる企業はどれくらいあるでしょうか。
食べログ、Googleマップ、Instagram、知人の紹介。答えの候補はこれまでもたくさんありました。けれどこの1〜2年で、そのリストに新しい項目が静かに、しかし確実に加わっています。「AIに聞いた」です。
私たち株式会社オノフは2026年7月、全国18〜69歳の男女2,012名を対象に、飲食店探しにおけるAI利用の実態を調査しました。結果を一言でまとめるなら、こうです。
AIは店探しの「入口」になった。しかし「決定者」にはなっていない。
この2つが同時に成り立っていることが、いま起きている変化の本質です。そしてここには、飲食業界に限らない示唆があります。データで見ていきます。
1|前提:生成AIの利用は、2年で6倍を超えた
まず、社会全体の地殻変動から。総務省が2026年7月24日に公表した『令和8年版 情報通信白書』によれば、日本国内における個人の生成AI利用経験率は、2023年度9.1%、2024年度26.7%、そして2025年度は58.8%。国際比較と年代別を並べると、こうなります。

2年で6倍以上。1年前の白書で「約3倍に拡大」と報じられた26.7%が、さらに倍以上になりました。日本人の過半数が、すでに生成AIに触れている段階です。
年代別では、15〜19歳91.7%、20〜29歳78.2%、30代56.3%、40代49.0%、50代44.2%、60代33.5%。10代はほぼ全員、20代は約8割、そして60代も3人に1人。「若者だけの話」という整理は、もう成立しません。
国際比較は中国93.6%、米国75.6%、ドイツ75.6%に対し日本58.8%。差はまだありますが、企業の業務利用では86.4%と、米国との差は4.5ポイントまで縮まりました。
これはマーケターにとって他人事ではありません。Ahrefsが30万キーワードを分析したところ、AI Overviews導入前後(2023年12月/2025年12月比較)で日本のオーガニッククリックは約37.8%減少、グローバルでは約58%減少。「検索結果に表示されること」と「サイトに来てもらえること」が、静かに切り離されつつあります。
では、その変化は「店を探す」という日常的でローカルな行動にどう表れているのか。
2|飲食店を探す人の4割強が、すでにAIを使っている
まず母数から。回答者のうち普段から飲食店を探す機会がある人は46.4%(「よく探す」10.4%+「ときどき探す」36.0%)。ほぼ半数です。

その人たちに「飲食店を探す際にAIを利用したことがあるか」を聞いた結果が、今回の調査でもっとも直接的な数字になります。全体で41.2%、18〜29歳では61.4%。

飲食店探しというごく具体的なタスクで、すでに4割がAIを使ったことがある。若年層では6割超。性年代別に分解すると、傾斜はさらに鮮明です。

最も高いのは男性18〜29歳の64.4%。女性18〜29歳が58.4%で続きます。一方で、60代でもおよそ2割が使っています。年齢とともになだらかに下がるものの、どの層にもゼロの場所はありません。
もう一つ見落とせない数字があります。AI利用者に「1年前と比べた利用頻度」を聞いたところ、すべての性年代セグメントで「増えた」が6割を超えました。最も高かったのは男性60〜69歳の74.5%、次いで女性30〜39歳の71.2%。「減った」はどのセグメントでも5%未満です。

これは、若年層から順に広がる途中の現象ではなく、全年代で同時に加速している現象だということです。いま4割なら、来年は──この問いに上向き以外の答えを想定する根拠は、今回の調査からは見つかりませんでした。
3|人はAIに何を頼んでいるのか─「おすすめ」と「比較」
では、AIに何を期待しているのか。
AIに期待する役割(複数回答)
- おすすめを知りたい:39.9%
- 比較してほしい:37.6%
- 条件に合う店を提案してほしい:33.2%
AIに期待する具体的な内容(複数回答)
- 口コミを要約してほしい:26.7%
- メニューを比較したい:24.1%
- 利用シーンに合う店を探したい:22.4%
- 時間を短縮したい:14.7%
- 新しい店を知りたい:14.5%

並んでいるのは、すべて「情報を絞り込む」タスクです。「新宿で4人、個室あり、一人3,000円で飲み放題込み」こうした複数条件を一度に投げて、候補を3つに絞ってもらう。従来なら、グルメサイトでチェックボックスをいくつか入れ、20件の一覧を上から眺めていた作業です。
注目したいのは「時間を短縮したい」が14.7%にとどまる点。人はAIを時短ツールとしてではなく、判断の相談相手として使いはじめています。上位3項目はいずれも、人間の側に最終判断を残した頼み方です。

4|AIに求められる情報は、メニュー・価格・写真
さらに具体的に、「AIにどんな情報を出してほしいか」を聞きました。11項目のうち、メニュー58.5%、価格57.2%、写真49.5%がトップ3に。

ここで立ち止まってほしいのですが、この3つは、お客様が昔から確認していた情報とまったく同じです。AI時代だからといって新しい情報を作る必要はない。求められているのは、すでに価値の中心にあるものを、AIが読み取れる形で置いておくこと。ということになります。
逆に言えば、メニューが画像1枚のPDFでしか置かれていない、価格が「時価」としか書かれていない、写真が3年前のもの——という状態は、AI時代には「情報がない」のと近い扱いを受けかねません。
5|山場:AIが挙げた店の「75.9%」に、実際に来店している
ここが今回の調査で最も重要な数字です。
飲食店探しにAIを使った人のうち、AIが紹介した店に実際に来店した人は75.9%。およそ4人に3人です。

「AIが答えた」で終わっていない。足が動いている。
マーケティングの文脈で言えば、「AIの回答枠」はすでにコンバージョンに接続されたチャネルだということです。まだ広告枠として売られておらず、多くの企業が測定もしていない。しかし来店に効いている接点。
そしてこの接点には、追加の広告費が要りません。掲載順位を買うのではなく、AIが読む情報を整える。枠の取り合いではなく、自社の情報資産の整備です。
6|ただし「AIだけで決める」人は、8.8%しかいない
ここで話が終われば「AI最強」という単純な結論になりますが、データはそう言っていません。
AIで候補を見つけたあと、実際に何をしたか。上位はGoogleマップ43.2%、Google検索41.9%、グルメサイト38.0%。

AIの情報だけで判断する人は8.8%。1割にも満たない。9割以上が、そのあと別の情報源で裏を取っているのです。
これはAIの回答が信頼されていないという話ではありません。総務省の白書でも、生成AI利用時に「生成内容が正しいか、他の方法で確認している」が日本の利用者の回答で最多(33.9%)。確かめるという行為自体が、AI利用とセットになっているのです。
実務に翻訳すると、こうなります。
AIに候補として挙げられただけでは、勝負は決まらない。
挙げられたあとの「確認フェーズ」で情報が一致していなければ、落ちる。
AIが「個室あり・3,000円」と答えたのに、Googleマップの営業時間が古く、公式サイトの価格が違い、食べログの写真がリニューアル前——この不一致はAIに挙げてもらえない機会損失につながります。
7|最終判断の主軸はGoogleマップ。そして「最後の一押し」は人によって違う
では最終的に、来店する店を決めるうえで最も参考にした情報源1つは何だったのか。(n=1,398/検索エンジン経由は参照先を特定できないため除外して再構成)
Googleマップが27.4%で単独首位。食べログ18.2%、ホットペッパーグルメ11.7%が続き、AIは3.4%です。

入口では41.2%が使うAIが、最終判断では3.4%。この落差こそ、変化の正確な姿です。AIは「決める場所」ではなく「見つける場所」になった。
さらに性年代別で見ると、「最後の一押し」は驚くほど分かれます。
- 男性18〜29歳:Googleマップ39.2%が突出
- 女性18〜29歳:Googleマップ26.6%に対し、Instagramが22.3%とほぼ並ぶ
- 男性60〜69歳:食べログ30.8%がGoogleマップ21.1%を上回る
- 女性60〜69歳:食べログ21.3%、公式ホームページ19.7%、知人紹介17.3%が拮抗
女性18〜29歳のInstagram22.3%、女性60〜69歳の公式サイト19.7%。この2つは、そのターゲットに向き合う事業者にとって、そのまま優先順位の指示書になります。
性年代別の内訳を並べると、Googleマップの帯が若年層で長く、60代では食べログと公式ホームページが伸びる、という交代がはっきり見えます。

全年代に共通する「正解のチャネル」は存在しない。 共通しているのは、複数の情報源を行き来するという構造のほうです。
8|結論:ジャーニーは「置き換わった」のではなく「再編された」
ここまでのデータを、一本のジャーニーに描き直すとこうなります。店選びの入口に「AIに聞く」という段が加わり、その下流に、これまでの情報源が「確認の場」として並び直しました。

候補発見はAI、比較・確認はGoogleマップ・Google検索・グルメサイト・SNS、そして意思決定と予約・来店。若年層では、比較・確認フェーズにInstagram・TikTokがより強く入り込みます。
重要なのは、AIが既存チャネルを置き換えたのではないということです。ファネルの最上流に一段が「追加」され、その結果、下流の各チャネルの役割が組み替わった。グルメサイトは「発見の場」から「確認の場」へ。Googleマップは「地図」から「最終判断の主軸」へ。
そしてこの再編は、飲食業界だけの話ではありません。「複数条件で候補を絞り、複数ソースで裏を取り、最後に人が決める」——この構造は、住宅、クリニック、美容、旅行、教育、BtoBのベンダー選定にも当てはまります。飲食は、取引頻度が高く意思決定が速いぶん、変化がいち早く数字に出る領域にすぎません。自社の業界に同じ構造を当てはめたとき何が起きるか、その先行指標として見ていただきたいと思っています。
実際の動きを一人の行動として追うと、こうなります。条件を投げ、AIが3店を挙げ、その3店をマップや検索で確かめ、店を決める。AIだけで完結せず、複数の情報源を行き来しながら決まっていくのがこのジャーニーの実態です。

9|マーケターへの示唆:AIOをどう投資として見るか
ここで整理しておきたいのが、AIO(AI Optimization)という考え方です。AIに正しく引用・推薦されるための最適化であり、SEOを置き換えるものではなく、その上に加わるレイヤーです。
SEOとAIOの関係を並べて整理すると、目的も対象も、整えるものも違います。SEOが「ウェブ検索で見つけてもらう」ためのベースなら、AIOは「AIの回答で正しく引用・推薦される」ための整備です。

AIOで整えられるのは、①自社の価値を定義し、②AIが理解できる情報に翻訳し、③AIが候補として提示するところまで。最後に選ぶのは人です。ここを取り違えると、「AIに媚びた情報」を作って人に選ばれない、という本末転倒が起きます。
実行には順番があります。すべてを一度に変える必要はありません。
- 現状診断:ChatGPT・Gemini・Perplexityに、顧客が使いそうな条件文(「新宿 個室 4人 3,000円」)を実際に投げてみる。何が出てきて、何が間違っているか。
- 4つの打ち手を洗い出す:①情報整備(メニュー・価格)②公式情報(サイト・マップ)③接点統一(AI・SNS)④顧客導線(知る→予約)
- 優先順位を決める:全部やらない。欠落している場所、食い違っている場所から。
- 実行・運用:1ブランド・数店舗で始め、効果と運用負荷を確認してから広げる。
この順番を図にすると、こうなります。すべてを一度に変えないことが要点です。

投資判断の材料としては、次の4点が効くはずです。
- 発見ルートの変容:飲食店探しでのAI利用41.2%(18〜29歳は61.4%)
- 来店への転換:AIが挙げた店に実際に来店75.9%
- 持続性:広告は出稿を止めれば消える。整えた情報は残る
- 代替手段:掲載順位は買えても、AIが読むのは「載っている情報」そのもの

整えるのは、AIが読める構造と、メニュー・価格・写真。お客様が確認する情報とまったく同じものです。新しい広告枠を買う必要はありません。 いまの販促費を届かせるために、自店サイトの情報と構造を整える——そういう投資の見方になります。
おわりに
冒頭の問いに戻ります。「あなたのお店を初めて訪れた人は、何でお店を知りましたか?」
2026年の答えは、おそらく一つではありません。AIで見つけて、マップで確かめて、SNSで雰囲気を見て、グルメサイトで評価を確認して、来店する。その流れのどこか一箇所でも情報が欠けていれば、そこで候補から外れます。
AIに理解される情報と、人が選ぶ価値。この2つを、一つの流れとして整える。
まずは、自社が「いまAIにどう見えているか」を確認するところから始めてみてください。次回は、オノフで実施している「AIからの見え方」診断のプロセスを、具体的な手順とともに書く予定です。
調査・出典
本記事の調査概要
- 調査名:AIの利用実態および飲食店探しにおけるAI活用状況と情報行動に関する調査
- 調査目的:AIの利用実態、および飲食店探しにおけるAI活用状況と情報行動の把握
- 調査対象:全国の18〜69歳の男女
- サンプル数:n=2,012(事前調査 n=3,796)
- 調査方法:インターネットリサーチ
- 調査期間:2026年7月
- 調査機関:株式会社オノフ
引用した外部統計
- 総務省『令和8年版 情報通信白書』(2026年7月24日公表/2025年度調査)
- 総務省『令和7年版 情報通信白書』(2025年7月8日公表/2024年度調査)
- Ahrefs「AI Overviewsのゼロクリック影響に関する調査」(30万キーワード/2023年12月・2025年12月比較)
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