AIDMAモデルと愉快な仲間たち
マーケティングの世界では、消費者の購買行動を理解し、効果的に影響を与えることが重要です。その中で「AIDMA(アイドマ)モデル」は広く用いられている理論の一つです。
今回は「AIDMAモデル」の基本から、そこから派生した最新モデルをご説明します。
AIDMAモデルの定義と概念
AIDMAモデルは、消費者の購買行動を
「Attention(注意)」
「Interest(興味)」
「Desire(欲望)」
「Memory(記憶)」
「Action(行動)」
の5段階に分解/説明する理論です。
消費者はまず、その製品の存在を知り(Attention)、興味をもち(Interest )、欲しいと思うようになり(Desire)、記憶して(Memory)、最終的に購買行動に至ります(Action)。
このように購買決定プロセスを分解して、顧客がどの段階にあるかを見極めることで、顧客の状態に応じたコミュニケーション戦略をとることができるようになります。
「AIDMA」と検索すると「古い」というサジェストが出ますが、理論自体は1920年代にアメリカ合衆国の販売・広告の実務書の著作者であったサミュエル・ローランド・ホール氏が著作中で提唱したもので、100年の時を超えて今もなお学ばれるマーケティング理論です。
消費者の認知から購買までの過程
AIDMAモデルの各段階を意識してマーケティング活動は実施する場合、例えば、広告は「Attention(注意)」の段階で効果を発揮し、興味を引くコンテンツは「Interest」を喚起します。「Attention」は、商品やサービスのことを「まだ知らない」段階です。世の中にはたくさんの商品やサービスが溢れていますね。その中で、販売する商品やサービスに注目してもらうことが最初のステップとなります。
例として…
・広告(テレビ、ラジオ、新聞、ネット)
・対面営業
・口コミ
・SNS
・検索(Googleなど)
・メディア記事
これらのメディアを活用し「Attention」を行います。なお、AIDMAが登場した100年前のメディアは、ラジオ、新聞と口コミです。新聞は1870年代に登場し、ラジオは1920年代、テレビは1950年代から広まりました。インターネットが登場した1990年代以降は、情報量が格段に増えました。
時代とともにメディアは変化しますが、「Attention」においての目標は「認知度の向上」で変わりありません。
新たな消費者行動とAIDMAモデルの限界
AIDMAモデルのメリットは、そのシンプルさと普遍性にあります。多くの消費者行動に当てはめやすく、様々な業界や製品で応用可能です。
しかし、デジタル技術の進化により、消費者行動はより複雑化しています。このため、AIDMAモデルだけで全てを説明するのは難しく、他の理論やモデルと組み合わせる必要があります。
デジタル技術の進化→インターネットの存在を前提とした新しいモデルが「AISAS」です。
ちなみに『アイサス』と読みます。こんにちは。それはあいさつ。
AIDMAモデルとAISASモデルの相違点
2000年代に入ると、消費者は商品情報を受動的ではなく能動的に探すようになり、さらに購買後にも特徴的な行動を起こすようになりました。それが「Search(検索)」と「Share(共有)」です。
「Attention(注意)」
「Interest(興味)」
「Search(検索)」
「Action(行動)」
「Share(共有)」
AIDMAは、情報を発信する企業側とそれを受ける消費者という一方通行のモデルでした。
しかしAISASは、「検索(Search)」と「共有(Share)」という消費者の能動的な行動を加えて、企業と消費者が互いに関与し合う双方向な関係へと変化し、消費者の行動がActionで終わらずに、その経験を共有し合うのが大きな特徴です。
家庭におけるインターネットの普及に伴い、消費者は自ら検索サービスを通じて能動的に情報を調べる「Search(検索)」を行うようになりました。そこには「購入して失敗したくない」という心理的背景があります。消費者は、失敗しないように検索と検討を重ね、納得した上で購入に至るようになりました。
さらには、口コミの投稿や評価サイトでの投稿=Share(共有)が気軽におこなわれるようになりました。インターネットやSNS上で購入者に商品の情報を共有してもらえれば、新たに検討している人にとっては大きな判断材料になります。
この2つのプロセスが加わったことで、企業は自社のWebサイトを持つことが必須となり、ソーシャルメディアも含めたコミュニケーションチャネルから、広告だけでは伝えきれない情報を伝えることが求められるようになったのです。
具体的な適用例と事例
AISASの成功事例は「Search(検索)」するとたくさん出てきますので、詳細は割愛しますが、代表的な例として
・スターバックス
・ライザップ
・メルペイ
は「Share(共有)」を上手に活用しており、消費者が自発的にプロモーションを行うような仕組み作りを行った例として挙げられます。
まだまだ出てくる次世代の購買行動モデル
前段で、デジタル技術の進化により消費者行動はより複雑化していると書きましたが、SNS全盛期と言われる時代から、コンテンツマーケティング(有益な情報を発信して消費者とコミュニケーションを図る)の時代へと変化を遂げつつある昨今、購買行動モデルにおいてもAISASもすでに古い行動モデルと言われるようになり、次々と次世代型の行動モデルが登場しています。例として…
AISCEAS(アイセアス)
AISASに似たモデルですが、AISASの購買プロセスに「Comparison(比較)」「Examination(検討)」を追加し、AISASよりも消費者の慎重さを表す購買モデルと言われています。
「Attention(注意)」
「Interest(興味)」
「Search(検索)」
「Comparison(比較)」→同類商品の比較を行う
「Examination(検討)」→どれにするか、または購入するか否かの検討を行う
「Action(行動)」
「Share(共有)」
Dual AISAS
AISASの発展系です。
AISASは「コミュニケーションへの興味を高めれば、連動して商品への興味も高まる」と考えますが、Dual AISASは「この2つに連動性はなく、戦略的な連動が必要」と考え、いかに「コミュニケーションに関心のある層」を「商品に関心がある層」に変容させるかを目的としたモデルです。
その課題を解決する鍵が「Activate(起動・活性化)」です。
「Activate(起動・活性化)」
→なんらかのきっかけで、コミュニケーションから商品そのものに興味が移る
「Interest(興味)」
「Search(検索)」
「Action(行動)」
「Share(共有)」
DECAX(デキャックス)
DECAXは、2015年に電通が提唱したコンテンツマーケティング時代を代表する購買行動モデルです。従来の行動モデルは企業視点でしたが、DECAXは消費者視点で展開されます。
AIDMAやAISASのように「Attention(注意)」から始まるのではなく「Discovery(発見)」から始まる点に消費者視点である特徴が表れています。
DECAXが提唱される背景には情報の飽和があり、企業側が有益な情報を発信し消費者に見つけてもらう必要があるのです。
「Discover(発見)」→消費者が検索、SNS、オウンドメディアで発見する
「Engage(関係)」→有益な情報源として企業への信頼度を高める
「Check(確認)」→運営企業や商品・サービスの詳細を確認
「Action(購買)」→信憑性等が確認できたら、商品を購入
「Experience(体験・共有)」→商品・サービスを体験しSNSなどで共有する
…が挙げられますが、いろいろなモデルがありますので、興味がありましたら調べてみてください。
最後に
このように様々なモデルを用いたマーケティング活動では、当社のようなリサーチ企業が定量/定性での情報収集と傾向分析を行い、ご支援させていただくことが多くあります。
ご興味がありましたら、お気軽にお問い合わせください。