アンケート集計と分析の重要性

デジタルマーケティングカンパニー・オノフのすぎやまです。
アンケート集計と分析は、得られたローデータを効率的にまとめ、価値ある情報に整理するプロセスであり、正確な集計と分析によって、ビジネスの意思決定や戦略立案に役立つ重要な洞察を得ることができます。この記事では、基本的な集計方法から効果的な分析テクニック、実用的なツールの活用法まで、アンケート調査を成功させるために欠かせない知識を解説します。
アンケート調査の目的と基本用語
アンケート調査の最大の目的は「意思決定のための材料を得ること」です。成功させるためには、「何を知りたいのか」という目的を最初に明確にすることが重要です。
基本的な質問形式には「単一回答」と「複数回答」があります。
・単一回答:選択肢から一つだけを選ぶ形式
・複数回答:複数の選択肢から該当するものすべてを選ぶ形式
集計の基礎となるのは「ローデータ」と呼ばれる生の回答データで、これを適切に扱うことが調査の信頼性を高める鍵となります。
集計方法の種類とやり方
アンケート集計には、目的や設問形式に応じて主に4つの方法があります。それぞれの集計方法を適切に選択・組み合わせることで、より具体的で価値のある情報を引き出すことができます。
単純集計
設問ごとに回答数や割合を集計する基本的な方法です。例えば「はい」「いいえ」「どちらでもない」といった選択肢の回答分布を把握できます。全体の傾向を素早く確認するのに最適で、他の詳細分析の土台となります。
実施手順(Excelでの例)
1.ローデータを準備する(各設問を列、回答者を行に整理)
↓
2.COUNTIF関数で数をカウント(例:=COUNTIF(B:B, “はい”))
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3.割合を計算する(人数 ÷ 総回答数 × 100)
↓
4.グラフ化して視覚的に表現

クロス集計
属性情報(性別・年代など)を掛け合わせて傾向を分析する方法です。「20代女性は商品Aを好む」「50代男性はサービスBに不満を持つ」といった、特定層の特徴を浮き彫りにできます。マーケティング戦略の立案や顧客セグメント分析に非常に有効です。
Excelでのクロス集計
- COUNTIFS関数を使用:複数条件を組み合わせた集計が可能
- ピボットテーブルの活用:複雑な条件でもドラッグ&ドロップで簡単に作成

自由記述回答の集計
記述回答をキーワード別に分類し、意見や感情の傾向を把握する方法です。数値では表現できない生の声から、選択式では見えてこない深い洞察や改善ポイントを発見できます。「使いにくい」「わかりにくい」といった言葉の頻度や文脈を分析することで、具体的な課題が見えてきます。
- 回答内容を収集
- 目視で確認し、共通するテーマやキーワードごとに分類・整理
- タグ付けやカテゴリー分けを行い、意見や感情の傾向を把握
- 回答数が多い場合は、テキストマイニングツールを活用して頻出語や特徴的な単語を抽出

複数回答の集計
1人が複数の選択肢を選ぶ設問の特別なカウント方法です。「当てはまるものをすべて選んでください」といった質問形式で使用され、選択肢間の組み合わせパターンや同時選択率なども分析できます。購買決定要因や複合的なニーズを把握するのに役立ちます。
これらの集計方法は単独でも強力ですが、組み合わせることでより多角的な分析が可能になります。例えば、クロス集計と複数回答の分析を組み合わせれば、「どの年代がどの機能を重視しているか」といった詳細な傾向も明らかにできるでしょう。調査の目的に合わせて、最適な集計方法を選択することが重要です。
集計方法のポイント
- ローデータは「選んだ=1」「選ばなかった=0」のように、各選択肢ごとに列を分けてダミー変数として整理
- 各選択肢について、COUNTIFまたはSUM関数で「1」の数を合計すれば選択数がわかる
- 複数回答では「選択肢の合計 ≠ 回答者数」となることに注意
- 表示には「帯グラフ」や「積み上げ棒グラフ」が効果的

Excelを用いたアンケート集計
Excelでアンケート集計を行う際は、まずローデータを整理された形式で入力することが重要です。
- 行:回答者ごとに1行
- 列:設問ごとに1列(例:Q1、Q2…)
ローデータは選択肢を文字やコード(例:1=はい、2=いいえ)で統一して入力します。複数回答設問は、各選択肢ごとに列を分け、「選択=1、未選択=0」のように記録すると集計しやすくなります。

Excel関数を活用した自動集計
アンケート集計に役立つ代表的な関数と用途
関数名 | 用途 | 具体例 |
COUNTIF | 単一条件での件数集計 | Q1で”はい”と答えた人数をカウント |
COUNTIFS | 複数条件での件数集計 | 女性かつ20代で”商品A”を選んだ人数 |
SUM | 数値の合計を出す | 選択肢Aの合計得票数 |
SUMIF | 条件付きの合計 | 20代の合計スコア |
IF | 条件によって処理を分ける | 〜なら1、〜でなければ0とする処理 |
関数による集計の最大のメリットは、ローデータを差し替えたときに自動で再計算される点です。
Excelマクロによる効率化
マクロを使えば、関数の入力やフィルター操作、グラフ作成などの一連の手順を自動化し、作業を大幅に効率化できます。
- Excelには、プログラミング不要でマクロを作れる「記録機能」がある
- データの並べ替え、フィルター設定、関数入力、グラフ挿入などをまとめて自動化可能
- 作業時間の短縮とヒューマンエラーの防止に効果的

Googleスプレッドシートでの集計方法の強み
Googleスプレッドシートは、Excelと同様の関数が使える無料かつ手軽なツールです。Googleフォームとの連携や共同編集といった特長があり、チーム作業や遠隔での対応に強みがあります。
Googleフォームとの連携でリアルタイム集計
フォームからの回答がリアルタイムでスプレッドシートに記録される
フォームの構成変更がスプレッドシートにも反映される
複数人での共同編集が可能
離れた場所にいるメンバー同士で同時に編集できる
コメント機能や変更履歴の保存機能も備えている
グラフによる結果のまとめ方
グラフの種類 | 使いどころ | 特長 |
円グラフ | 割合の構成を示すとき | 全体に対する割合がひと目で分かる |
棒グラフ | 選択肢ごとの比較 | 項目ごとの差が明確に出る |
帯グラフ | 複数回答の比率表示 | 項目の構成を水平方向で可視化 |
グラフ作成のコツ
グラフは”見せたいこと”を1つに絞り、目的に応じてグラフの種類を選ぶことが大切です。
- 色使い:重要なデータにだけ強い色を使い、それ以外は淡い色で抑える
- ラベル:数値やパーセンテージを明記し、一目で内容が分かるようにする
- 凡例:不要な場合は非表示にしてスッキリさせる
- 項目数が多い場合:重要な項目に絞るか、グラフを分けて表示する
アンケート結果分析のポイント
集計が終わったら、次のステップは「分析」です。ここでは単に数値を並べるだけでなく、データの特徴や傾向を読み取り、意味を見出すことが求められます。
基本統計量の活用
- 平均値:全体の中心を捉える指標だが、外れ値の影響を受けやすい
- 中央値:すべての回答を順に並べたときの真ん中の値で、外れ値に左右されにくい
- 最頻値:最も多く選ばれた選択肢を示し、人気の傾向を知るのに役立つ
これらの指標はExcelで簡単に算出できます(AVERAGE、MEDIAN、MODE関数)。

相関や回帰などの分析方法
相関分析
2つの変数の間に関係性があるかどうかを数値で示す手法
- 例:「満足度」と「利用頻度」の関連性
- 値が1に近いほど正の相関、−1に近いほど負の相関
回帰分析
ある要素が結果にどのような影響を与えているかを分析
- 例:「サポート満足度」や「価格の妥当性」が総合満足度にどの程度影響しているか
- 重視すべき改善ポイントを明確にできる
テキストマイニングと記述データの活用
テキストマイニングとは、文章データから特徴的な単語や傾向を抽出する分析手法です。アンケートの自由記述回答欄のような数値化しづらい情報を分析するのに有効です。
基本的な流れ
- テキストを単語に分解(形態素解析)
- 不要な語句を除外(助詞など)
- 頻出単語やキーワードを抽出
- 抽出した語をもとに、傾向やパターンを分析
専用のツールを使えば、ワードクラウドや出現頻度グラフなどで視覚化することも可能です。

アンケート集計ツールの選び方
アンケートの集計や分析を効率的に進めるには、目的に合ったツール選びが重要です。
無料で基本的なツール
Excel/Googleスプレッドシート:関数やピボットテーブルで基本的な集計が可能
Googleフォーム:Webアンケートと集計の連携が簡単
専用の分析ツール(有料)
- SurveyMonkey:Webアンケートから集計・レポートまで対応し、初心者でも扱いやすい
- KARTE Survey:UX改善に強く、ユーザー行動と回答を紐付けた分析が可能
- Questant:グラフ出力やカスタマイズ性に優れる
ツール選びの際は、予算、操作のしやすさ、他のシステムとの連携性なども考慮しましょう。
まとめ:アンケート集計と分析の基本ポイント
アンケートから得た情報を活用するには、目的に沿った設問設計と正確な集計・分析の実施が欠かせません。単純集計で全体の傾向を把握し、クロス集計や自由記述回答の分析を加えることで、属性別の特徴や潜在的な課題を明らかにできます。
重要なのは、数値を集めることそのものではなく、分析から「どんな気づきを得て」「どのように活かすか」を考える姿勢です。結果をグラフや資料に整理し、関係者と共有することで、調査の成果が組織内で最大限に活かされます。
基本をおさえて丁寧に取り組むことで、アンケート調査の質と結果の信頼性は大きく向上します。効果的な集計と分析を通じて、ビジネスの成功につながる重要なインサイトを得てください。
よくある疑問と注意事項
- 複数回答の集計で、選択肢の合計が回答者数を超えるのはなぜ?
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一人の回答者が複数の項目を選べる形式のため、選択肢ごとの合計は全体数より多くなります。集計時には「件数」と「回答者数」を区別して扱いましょう。
- 少数の属性グループの結果も信用してよい?
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回答数が極端に少ないグループは、偏りの影響が大きくなりやすいです。参考情報として扱い、過信しないようにしましょう。
- 自由記述回答は全部読むべき?
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件数が少ない場合はすべて確認するのが望ましいですが、多い場合は代表的な意見を抽出したり、キーワードの出現傾向を見ると効率的です。テキストマイニングの活用も効果的です。
- 分析結果をどう共有すればよい?
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グラフやコメントを使って、視覚的にわかりやすくまとめるのが基本です。特に意思決定者に向けた資料では、要点を絞り、簡潔に整理する工夫が必要です。