クロス集計の種類やメリット・デメリット等をマーケティング観点も踏まえてわかりやすく解説
クロス集計はデータ分析において強力なツールとして広く利用されています。マーケティング担当者にとって、クロス集計の種類やそのメリット・デメリットを理解することは、効果的な戦略策定に不可欠です。
クロス集計の特徴としては、異なるカテゴリー間の関係性を視覚化する方法ということです。
マーケティング担当者やデータ分析に関心のあるビジネスパーソンにとって、クロス集計は非常に有用な手法です。適切に活用すれば、より効果的でターゲットに合わせた戦略を展開することが可能です。そのため下記にてクロス集計についてわかりやすくご紹介していきます。
クロス集計とは?
クロス集計とは、2つ以上の質問項目の回答内容をかけ合わせ、回答者属性ごとの反応の違いを見るようなときに用いたり、回答データを細分化して把握できる集計方法のことを指します。
まず押さえておきたいこととして、1行に1回答者の回答結果が記載されるローデータを見るだけだと全体の結果を俯瞰することは困難です。そのため、「集計」を用いて回答者全体を理解することが大切です。
よく用いられている使い方は、アンケート結果の「男性」「女性」の性別を縦軸、「はい」「いいえ」を横に置いた2×2のクロス集計表です。
グラフでの可視化が効果的!
クロス集計で得られるデータをグラフで可視化する方法は、マーケティング担当者やデータ分析に関心のあるビジネスパーソンにとって非常に有益です。
例えば、顧客の年齢層と購入頻度の関係をクロス集計し、その結果を棒グラフや円グラフで表示することで、特定の年齢層が特定の商品をよく購入していることが直感的に理解できます。
グラフを使用すると、複雑な数値データが視覚的に明確になり、異なる要素間の比較も容易になります。これによってデータから迅速に洞察を得て、意思決定を迅速に行う助けとなります。例えば、マーケティングキャンペーンの効果を分析する際に、クロス集計とグラフを併用することで、異なるマーケティングチャネル(広告、SNS、メールマーケティングなど)の成果を視覚的に比較できます。それにより、どのチャネルが最も効果的かをすぐに把握できます。
ExcelやGoogle Sheetsを使用すると、クロス集計表を簡単に作成し、グラフ化することができます。これらのツールは使いやすく、視覚的なデータ分析を強力にサポートします。
エクセルでは「ピボットテーブル」でクロス集計表の作成も可能となります。またクロス集計は帯グラフで見せることが多いといわれています。
「ピポットテーブル」での作成手順
Excelの「ピポットテーブル」でクロス集計が可能というお話を前述しましたが、ピポットテーブルでの作成手順をまとめました。
①Excelの集計したいリスト内のセルをアクティブにした状態で「挿入」タブをクリック
②「ピポットテーブルを挿入」をクリック
③集計したい範囲をドラック&ドロップ
④「新規ワークシート」が選択されていることを確認
⑤OKボタンをクリック
以上でピポットテーブルが作成されたので、あとはピポットテーブルのフィールドからリスト項目のエリアに視覚化させたい情報をドラック&ドロップすることで表を完成させることができます。
またスプレッドシートのピボットテーブル機能を使えば、ほぼ自動的にクロス集計表を作成でき、スプレッドシートには検定をする機能が備わっているため、簡単に計算をさせることができます。
ピポットテーブル以外にもRやSPSSといった統計用ソフトでもクロス集計が可能です。
クロス集計方法の種類と設問例
クロス集計は、集計したデータを細分化して把握できるため、あらゆる統計的調査で使用されますが、よく使われる分析手法の、「属性クロス集計」と「設問間クロス集計」、「多重クロス集計」という集計方法があるので、詳しくご紹介します。
①属性クロス集計
属性クロス集計は、回答者の属性ごとに回答の傾向を比較する方法です。
「女性はどういう傾向にあるのか?」「役職によりどんな違いがあるのか?」といった違いを見たい場合に使われます。
【回答者属性の例】
・年齢
・性別
・職業
・居住地
・未婚/既婚
・家族構成
②設問間クロス集計
設問間クロス集計は、属性以外の2つ以上の質問項目をかけ合わせて比較する分析方法です。
「このように考えている人は、どういう傾向にあるのか?」「ある習慣がある人にはどのような違いがあるのか?」といったやや複雑な問いを調査したいときに使われます。
属性クロス集計よりも調査設計が込み入ったものになりやすい傾向にあります。
【設問のかけ合わせの例】
・運動に対しての評価(好き/普通/嫌い)と運動する頻度
・サービスの使用頻度と満足度
・SNS利用率と商品の知名度
・音声メディアの利用頻度と通勤の所要時間
③多重クロス集計
多重クロス集計とは、3つ以上の設問の回答データを掛け合わせる手法です。掛け合わせる設問が3つの場合は「3重クロス集計」、4つなら「4重クロス集計」といいます。
【設問のかけ合わせの例】
・年代、性別、サービスの満足度
・年代、性別、ある商品の購入意欲度
・年代、性別、月別、ある商品の購入頻度
単純集計とクロス集計の違い
次に「単純集計とクロス集計の違い」についてご説明します。
単純集計は、データを一覧表にまとめることで「どのような回答をした人がどのくらいいるのか」を視覚的に分かるようにする集計のことを指します。
クロス集計は、単純集計で得た数値に対して、性別・年代などを掛け合わせてその違いを読み取ることができる集計のことを指します。そのため、単純集計がベースにあってのクロス集計となります。
ここから、単純集計とクロス集計の大きな違いとして、「分析に使うデータ項目の数」であることが言えます。
クロス集計のメリット・デメリットとは?
クロス集計は、マーケティングデータの分析において重要なツールです。そのメリットとして、多次元的なデータを視覚的に把握できるため、データの相関関係や傾向を容易に理解できます。しかし、クロス集計にはいくつかのデメリットもあります。例えば、集計項目が増えると膨大なデータ量となり、分析が複雑化します。また、元データの品質や正確性が低い場合には、誤った結論を導きかねません。そのため、クロス集計を効果的に活用するためには、データの前処理や適切な集計項目の選定が不可欠です。
■メリット
・性別・年代・購入頻度といった分析軸の項目ごとに回答の傾向を知ることができる
・データの関連性が把握しやすくなる
・表計算ソフトで簡単に作成することができる
・少ない集計回数でさまざまな視点が持てる
■デメリット
・単純集計に比べて情報量が多い分、多重クロスすることで、逆に結果の読み取りに時間がかかったり、解釈が難しくなる
・膨大なデータは分析コストが高い
・カテゴリーごとのサンプル数が一定数必要(数が少ないと統計的な有意性が低くなってしまう)
クロス集計を行うにあたっての注意点
次にクロス集計の注意点をお伝えします。
・アンケート設計の段階でクロス集計を想定する
そもそも適切な設問が存在していなければ意味のある分析をすることができないので、調査の設計段階から「何を知りたいのか」という目的・課題を明確にしておく必要があります。そのため、「どのような集計軸を組んだら分析が可能か」という点を考え、加えてクロス集計が終わった後も、より深堀した統計分析を行いやすいような調査設計にすることも忘れずに取り組みましょう。
・クロス集計後の項目毎のサンプルサイズに注意する
一般的に定量調査は、1つの属性につき最低30のサンプルサイズがなければ信頼性に欠けると言われていることもあり、30未満に満たない項目にならないために、前述した「どのような集計軸を組んだら分析が可能か」を決定した後「アンケート回答者数はどのくらい必要なのか」ということを前もって計算しておくことが必要です。
・分析軸を必要以上に多くしない
設問によっては、クロス集計を行ったが故にデータが分かりづらくなる場合があります。
クロス集計は単純集計がベースにあることを上記でご紹介しましたが、まずは単純集計で全体像を把握した上で、クロス集計で詳細を分析するという流れが重要です。
過度なクロス分析は結果の信頼性を欠く可能性にも繋がります。
「とりあえずデータを細分化したら何か分かるかもしれない」という安易な考えでクロス集計を行うのは非常に危険ですので、注意しましょう!
クロス集計表の見方について
クロス集計表はデータ分析において非常に価値のあるリサーチ方法です。特にマーケティング担当者やデータ分析に関心のあるビジネスパーソンにとって、クロス集計表の見方を理解することは欠かせません。クロス集計表を使用することで、異なるデータセット間の関係やパターンを明確に捉えることができます。
表頭/表側
「表頭(ひょうとう)」「表側(ひょうそく)」とは、クロス集計の作成の際に使用する用語となります。一般にはあまり聞き慣れない言葉だと思いますが、クロス集計表の作成においては基本的な用語となります。
表頭(ひょうとう):表の上側
表側(ひょうそく):表の左側
ピポットテーブルで表を作成する場合、表頭にしたい項目を「列ラベル」、表側にしたい項目を「行ラベル」をドラッグ&ドロップさせて入力します。
SAとMAアンケート
SAとMAアンケート調査のやり方は、選択肢を使用した回答形式として「SA(SingleAnswer:単一回答)」と「MA(MultipleAnswer:複数回答)」があります。1つの選択肢を選ぶことで完結できる回答がある一方で、複数の選択肢を選んでもらう必要がある場合にはMAが使用されます。ルールとしてSAの場合は選択肢割合の合計は必ず100%になるので、選択肢の割合の合計が100%にならない場合には、ミスが起きている可能性があるので、注意して確認しましょう。
弊社クロス集計の調査事例と結果
ここからはクロス集計の実際の使用イメージを掴んで頂きたく、弊社が保有している女性パネルに毎月調査を行っている結果をまとめた「女子のキモチ」の人気な調査レポートの中からクロス集計している事例を3つご紹介させていただきます!様々な項目の組み合わせで調査しているレポートが多数ありますので、ご興味のある方はhttps://www.onoff.ne.jp/resource/#femtechからご覧ください。
推し活に関する意識調査
弊社調査レポート人気NO.1 「推し活に関する意識調査」の一部調査結果の例をご紹介します。
調査方法:インターネット調査
対象者:全国15~69歳 女性
調査期間:2023年4月14日~4月16日
有効対象者:3,170ss
調査期間:株式会社オノフ
■推しの認知経路
全体では「TVで見て」が38.7%が最も高く、次いで「動画投稿で見て」(24.5%)、「SNSで見て」(18.8%)と続いています。また年代別では、10~20代は「動画投稿を見て」「SNSを見て」が高く、30代は「動画配信サービスで見て」、40代以上は「TVで見て」が全体と比べて高いことがわかります。
推し活ジャンル別では、【k-popアイドル(女性)】を推している人は、「動画投稿で見て」の割合が最も高いが次いで高い「SNSで見て」の結果から、アイドル自身がSNSを駆使して、本業のアイドル活動の場以外でもコミュニケーションを積極的におこなっている様子が多く見受けられ、本業(アイドル)活動を見て認知するのではなく、SNSをきっかけに推しを認知する人も多いのかもしれない。
女性の「食生活」の実態
調査方法:インターネット調査
対象者:全国20~60代 女性
調査期間:2022年5月27日~5月30日
有効対象者:3,156ss
調査期間:株式会社オノフ
■バランスの良い食事とは?
バランスの良い食事だと思うものについて、全体で「野菜を多くとる/毎日とる」が70.0%と圧倒的に高く、次いで「一汁三菜(主食、主菜、副菜、汁物)」(57.1%)、「1日3食とる」(56.8%)と続く結果となりました。
また60代は「野菜を多くとる」「1日3食とる」「発酵食品を多くとる」「1日に多くの品目をとる」「旬の食材を取り入れる」が、全体と比べても10ポイント以上高い結果となっている一方、20代は「わからない/特にない」と回答している割合が、他の年代と比べて高い結果になっています。
■バランスの良い食事と考えるものの中で、実施できているもの
バランスの良い食事と考えるものの中で、実施できている割合は「1日3食をとる」が66.9%と最も高く、次いで「野菜を多くとる/毎日とる」(57.4%)、「発酵食品を多くとる」(50.7%)と続く結果となっています。
また実施できていない割合は「消化が良い食材を取り入れる」が71.4%と最も高く、次いで「1日に多くの品目をとる」(71.2%)、「1食に多くの食材が入っている」(68.9%)。12項目のうち7項目が、実施できていないと回答している割合が半数を超える結果となりました。
「チル消費」について女性の消費意欲のインサイトは?!
調査方法:インターネット調査
対象者:全国20~60代女性 2024年自分の為にお金を使いたいものがある人
調査期間:2023年12月8日~12月11日
有効対象者:2,260ss
調査期間:株式会社オノフ
■自分の為に使えるお金が増えると思う理由
全体で見ると、「お金を使いたいことが増えたから」が40.2%と最も高く、次いで「収入が増えた/増えそうだから」が32.2%、「生活費を節約できているから」が24.2%と続く結果となりました。
年代別で見ると、20代・40代は「収入が増えた/増えそうだから」が高く、就職や転職、役職に就くなどの仕事の変化がある割合が多い年代と考えられることから高くなっていると考えられます。また50代は「家族の為に使うお金が減ったから」が高く、子供がいる家庭は子供が高校生や社会人くらいの年代が多いと考えられることから、子供にかかる費用の負担が減ったのかもしれません。
今回は「クロス集計」についてご紹介しました。
クロス集計は、性別・年代・購入頻度といった分析軸の項目ごとに回答の傾向を知ることが出来たりと、様々な視点から分析をすることが出来るため、クロス集計に適した分析に使ってみてください!
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