なぜ今、機能から価値観へ?商品企画の新常識と戦略的アプローチ

デジタルマーケティングカンパニー・オノフのすぎやまです。
「うちの商品は機能的には優れているのに、なぜ思うように売れないのだろう?」そんな悩みを抱えている商品企画担当者の方も多いのではないでしょうか。実は、現代の消費者が商品選択において重視するポイントが大きく変化しているのです。今回は、顧客の心に響く商品企画を実現するための「価値観マーケティング」について、具体的な手法とともにお伝えします。
なぜ今、価値観マーケティングが商品企画に必要なのか
商品企画において、今や「価値観マーケティング」は不可欠な視点です。従来は製品の機能や価格だけで差別化を図ることが主流でしたが、近年では消費者の価値観やライフスタイルに寄り添った提案へとシフトしています。
商品企画とマーケティングの両面からアプローチし、顧客が何を大切にし、どのような提供価値を求めているかを深く理解することが重要です。その理解をもとに商品企画を行い、開発プロセスに反映することで、ブランドへの共感や信頼を築くことができます。
また、顧客の価値観を重視した商品企画は、単なる物理的な商品以上の付加価値を生み出し、市場での競争力向上にも直結します。価値観マーケティングを積極的に取り入れることで、変化の激しい市場環境でも柔軟な対応が可能となり、高い顧客満足と長期的なファンづくりにつながるのです。


価値観マーケティングの基本
価値観マーケティングとは、顧客の持つ価値観や信念に焦点を当て、それに基づいた商品やサービスを提供する考え方です。現代の消費者は、単に商品やサービスの機能だけでなく、自分の価値観や知識と共鳴するブランドや商品を選びたいという欲求を持っています。これは心理学における「自己概念理論(Self-Concept Theory)」に基づくもので、マーケティングにおいても、顧客の“なりたい自分”に寄り添った価値訴求が共感を呼ぶとされています。
こうした傾向が現代において、より顕著になっている背景には、SNSなどを通じた自己表現の重要性が高まり、「自分らしさ」を意識した選択が日常化していることが挙げられます。また、オンラインを中心とした消費環境では無数の選択肢から“自分に合ったもの”を選ぶ自由があるため、消費そのものが個人の価値観や理想の自己像を反映する行為として位置づけられるようになっています。さらに、多層化したアイデンティティの時代においては、消費者が自身の信念や社会的立場に共鳴するブランドを通じて「イミ消費(Meaningful Consumption)」を志向する傾向も強まっています。
価値観マーケティングにおいては、顧客の知識や内面に根差した価値観、感情を重視し、それらのインサイトを商品価値やコミュニケーション戦略にしっかりと反映させることが重要です。また、消費者はブランドや企業に自分自身を重ね合わせ、心理的に「同一視」することで強い帰属意識を抱くことがあります。これは社会心理学で提唱される「同一視理論(Organizational Identification Theory)」に関連しており、価値観マーケティングではこのような心理的な一体感の醸成も重視されます。これにより、商品の本来の持つ価値を高めつつ、ブランドと消費者の間に真の信頼関係を築くことができ、長期的な顧客ロイヤルティの向上にもつながります。

商品企画とマーケティングにおける関係性
マーケティングと商品企画は緊密に連携しながら進めることで、より市場で支持される商品づくりが実現します。マーケティングでは市場動向や顧客ニーズの分析に加え、商品のターゲットユーザーを明確にし、商品企画に必要な具体的な情報を提供します。これにより、商品企画は単なる新商品の創出ではなく、顧客にとっての提供価値を高め、実際に選ばれる商品へと昇華します。
商品企画の段階からマーケティング視点を取り入れることで、顧客ニーズや市場の変化に柔軟に対応できるため、商品の方向性やコンセプトの修正もしやすくなり、競合他社との差別化要素を見出しやすくなります。また、マーケティング担当者による市場調査や分析の結果を反映することで、より精度の高い商品企画が可能になります。
特に現代のように多様な価値観が共存する市場では、顧客の価値観を体系的に理解するツールや手法を活用することで、商品企画チームと顧客の間で横たわる「価値観のギャップ」を定着させ、橋渡しすることができます。例えば、ある顧客層が重視する「革新性」と別の層が求める「安定感」といった、現時点で相対価値観を商品設計にどう取り込むかという課題に対して、明確な意見を得られるようになります。
さらに、商品が市場に投入された後も、マーケティングは顧客からの反応や売上データなどをもとに、販売戦略や商品改良の具体的な提案を行い、商品の提供価値を継続的に高めます。これによって商品ライフサイクルを延ばし、長期的な収益化やブランド力の向上につなげます。
このように、マーケティングと商品企画が互いにフィードバックを繰り返すことで、顧客満足度の向上や競争優位性の確立が実現し、企業の持続的な成長に貢献します。
4P戦略の活用方法

4P戦略は、多くの企業で活用されている代表的なマーケティング手法の一つであり、製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、プロモーション(Promotion)の4つの要素によって構成されています。まず、製品では市場のトレンドや顧客ニーズを深く理解した上で、機能、品質、デザインに工夫を凝らし、競合他社との差別化を図ることが重要です。価格の設定においては、コストや競争環境、ターゲットとなる消費者の購買意欲を総合的に分析し、最適な価格帯を導き出します。流通については、顧客が手軽に商品を購入できる流通チャネルを選定し、オンラインショップや実店舗販売など複数の経路を柔軟に組み合わせることで利便性を高めます。プロモーションでは、広告、キャンペーン、SNSの活用など、効果的な情報発信を行い、ブランドや商品の認知度を高めるとともに購入意欲を引き出します。
この4P戦略をより効果的に実践するためには、価値観セグメンテーションの考え方を取り入れることで、各要素をより視点で最適化できます。
• 製品(Product) : 顧客の価値観タイプによって、重視すべき機能や品質、デザイン要素が異なります
• 価格(Price) : 価値観によって価格感応度や、価格に対して求める価値が異なるため、それに応じた価格戦略を設計できます
• 流通(場所) : 価値観によって好印象な購入チャネルや体験が異なるため、それに合わせた流通戦略が構築できます
• プロモーション(Promotion) : それぞれの価値観に響きやすいメッセージングやコミュニケーション方法を選択することで、より効果的な広告・宣伝活動が実現します
これら4Pすべての要素を一貫して最適化し統合的に活用することで、マーケティング手法としての効果が最大化され、市場における競争力を高めながら顧客満足度の向上を実現できます。

マーケティング手法の選定ポイント
マーケティング手法を選ぶ際には、リサーチによってターゲットとする顧客層の特性やニーズを正確に把握することが大切です。顧客の価値観や購買行動を十分に理解し、その情報をもとに最適なマーケティング手法とコミュニケーション手段を選択することが、効果的なアプローチにつながります。商品の特性や競合他社を含む市場環境もリサーチを通じて分析し、適切なメディアやチャネルを組み合わせて最大の効果が期待できる方法を検討することが必要です。
ここで、従来の人口統計的なセグメンテーション(年齢、性別、収入など)だけでなく、価値観に基づくセグメンテーションを始めることで、マーケティング手法の判断精度が飛躍的に向上します。例えば、同じ30代でも価値観によって伝わるメッセージやメディアが大きく異なるため、これを理解することで、より効率的なマーケティング投資が可能になります。
さらに、予算や人的リソースといった条件も考慮し、費用対効果の高いマーケティング手法を選定することが重要です。例えば、デジタルマーケティングはターゲット層を細かくセグメントしてアプローチできる一方で、実際に体験価値を提供するイベントやプロモーション活動も、ブランドへの信頼構築に役立ちます。
こうしたさまざまな要素を総合的に判断し、時には複数のマーケティング手法を組み合わせることで、顧客との継続的かつ強固な信頼関係を築くことが可能となります。また、常にリサーチによる結果の分析やマーケティング手法の改善を意識し、柔軟に見直しを行うことも成功のポイントです。
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商品企画に役立つフレームワーク
商品企画を効率よく進めるためには、フレームワークという知識を活用することが非常に有効です。こうした枠組みを導入することで、複雑な市場環境や多様化する顧客ニーズを整理でき、戦略的な意思決定をスムーズに行う基盤が整います。代表的なフレームワークとしては、マーケティング戦略における4P分析が挙げられます。これは製品の特徴、価格設定、流通チャネル、プロモーション活動という4つの要素を総合的に評価し、バランスの取れた戦略を立てる上で役立つ知識となります。
他にも、内部環境と外部環境を可視化するSWOT分析や、政治・経済・社会・技術の観点からマクロ環境を捉えるPEST分析などのフレームワークがあります。これらの知識を組み合わせて使うことで、商品企画の過程で潜在的な機会やリスクを把握し、柔軟な対応策を講じることができます。
近年特に注目を集めているのが、価値観に基づくフレームワークです。その一つとして、WKRN(ワカルン)が挙げられます。WKRNは科学的根拠に基づいた価値観診断ツールであり、消費者の多様な価値観を体系的に分類・理解するための枠組みを提供します。
WKRNの活用により、従来の商品企画プロセスを顧客中心型に変革できます。例えば、プロトタイピングの段階から異なる価値観を持つペルソナを設定し、そのペルソナがどのように商品を評価するかをシミュレーションすることで、商品企画の早期段階から市場の反応を予測できます。
具体的には、WKRNを商品企画に活用する場合、以下のようなプロセスが効果的です。

・価値観分析:ターゲット市場における価値観分布を把握
・価値観別ニーズ抽出:各価値観タイプ特有のニーズや課題を特定
・商品コンセプト設計:主要ターゲットとなる価値観に合わせた商品設計
・コミュニケーション戦略策定:各価値観タイプに響くメッセージングの開発
このようにWKRNは、抽象的になりがちな「価値観」という概念を具体的な商品企画指針へと変換する橋渡し役となります。特に多様な価値観が混在する現代市場において、どの価値観をメインターゲットとし、どの価値観をサブターゲットとするかの戦略的な判断が、商品の市場浸透に大きく影響します。
フレームワークによる分析は単なる状況把握に留まらず、チーム間で共通の知識や認識を持つことができるため、商品企画プロセス全体で一貫した方向性を維持するのにも役立ちます。商品企画の成功率を高めるためには、各段階で最適なフレームワークや知識を取り入れながら、戦略的かつ計画的にプロジェクトを推進することが重要です。
市場調査とプロセスの進め方
市場調査は商品企画の基盤を築く重要なステップであり、ターゲットのニーズや消費行動、市場の動向を把握するためリサーチが欠かせません。まずはリサーチ計画を立て、調査目標や対象となる顧客層を明確に設定します。その後、アンケートやインタビュー、観察などの多様な方法を駆使して情報を収集し、多角的な分析を行います。
特に価値観マーケティングを重視する商品企画では、従来の定量・定性調査に加えて、価値観診断ツールを組み込むことで、より深いレベルでの顧客理解が可能になります。例えば、市場調査の初期段階で価値観診断を実施し、ターゲット市場にどのような価値観が分布しているかを把握したうえで、各特性に合わせた調査設計を行うことができます。これにより、単に「何が売れるか」だけでなく「なぜそれが支持されるのか」という本質的な理解が深まります。
得られた調査結果を基に、顧客が求める価値や潜在的な課題を明確にし、新商品企画に向けた戦略を設計します。このプロセスにおいては、市場環境の変化に対応できるよう調査結果を随時見直し、計画を柔軟に修正することが重要です。
また、商品投入後もリサーチのプロセスを継続し、市場モニタリングを怠らず、販売データや顧客の声を分析して改善点を特定します。この段階でも、価値観セグメンテーションを活用することで、「どのような価値観を持つ顧客がどのような反応を示しているか」をより正確に把握でき、ターゲットを拡大するための施策や、特定層の顧客満足度を高めるための改良点が明確になります。こうした継続的なリサーチとプロセスの積み重ねが、顧客の期待に応える商品企画を可能とします。

定量調査と定性調査の違い
定量調査は、数値データを収集して統計的に分析し、市場の傾向や消費者の行動を客観的に把握するリサーチ手法です。アンケートやオンライン調査などが代表的で、多数の回答からパターンや割合を明確に抽出し、商品の認知度、購買意向、価格満足度などを測定する際によく利用されます。これにより、消費者全体の傾向を把握しやすく、客観的な意思決定に役立ちます。
一方で、定性調査は少人数を対象としたインタビューやグループディスカッションを通して、消費者の考え方や感情、価値観などを深く探るリサーチ方法です。こちらは数値化しづらい消費者の動機や心理的背景を明らかにすることに適しており、新商品のコンセプト作成や既存商品の改善点の発見に効果を発揮します。
これらの伝統的な調査手法に、価値観診断ツールを組み合わせることで、調査の質とコスト効率を同時に高めることができます。例えば、定量調査の段階で価値観診断を同時に実施することで、回答者の価値観ごとに統計データを分析できるようになります。また、定性調査においては、様々な価値観をバランスよく抽出してインタビュー対象者を選定することで、多様な価値観をカバーした深い洞察が得られます。
定量調査と定性調査の違いは、それぞれが収集する情報の性質と、リサーチ目的に合わせた使い分けにあります。両者は相互に補完し合う関係で、まず定量調査で市場全体の動向を把握し、その後に定性調査で詳細なインサイトを深掘りすることで、より正確で豊かな市場理解が可能となります。効果的な商品企画やマーケティング戦略のためには、これらの調査手法とWKRNなどの価値観診断ツールをバランス良く組み合わせて活用することが推奨されます。

価値観を反映した商品企画の事例
近年、価値観を反映した商品企画は多くの企業が注力する分野となっており、顧客のライフスタイルや社会的な関心に着目する事例が増えています。例えば、環境意識の高まりを受けて、プラスチック削減や再生素材を活用したエコ商品が開発されているケースがあります。こうしたエコ商品の事例は、ただ機能的であるだけでなく、消費者のサステナビリティへの価値観を商品価値として高めていることが特徴です。
また、健康志向の強い顧客層をターゲットにした無添加食品やオーガニック化粧品の事例も増加しており、安心・安全を大切にするライフスタイルが 商品価値に反映されています。消費者の多様な価値観に応える工夫によって、ブランドと顧客の間には強い共感や信頼関係が形成され、繰り返し購入につながるケースが多く見られます。
加えて、ダイバーシティやインクルージョンをテーマとした商品企画の事例にも関心が集まっています。多様性を重視した商品コンセプトの導入により、幅広い顧客層から支持を得ることができるようになっています。これらの取り組みは、単なるモノづくりを超えた企業の社会的メッセージとなり、ブランドイメージや商品価値の向上にも大きく寄与しています。
こうした価値観に基づく商品企画を成功させるには、価値観によるセグメンテーションを活用し、感覚的ではなく体系的に顧客の価値観を理解することが重要です。特に複数の価値観が混在する市場では、どの価値観をメインターゲットとし、どの価値観をサブターゲットとするかの戦略的な判断が、商品の市場浸透に大きく影響します。
まとめ
価値観マーケティングを取り入れた商品企画は、顧客の内面にあるニーズや信念を的確に捉え、それを商品コンセプトや戦略に反映させることが中心となります。しかし、多様化する価値観を効果的に商品企画に活かすためには、体系的なアプローチが不可欠です。価値観セグメンテーションを活用することで、抽象的になりがちな「顧客の価値観」を具体的な指針として商品企画プロセスに組み込むことができます。
市場調査で得たデータや知識をもとに、顧客が共感しやすい価値を創造し、4P戦略などのマーケティングツールを活用して具体的な施策に落とし込むことが重要です。特に、セミナーやワークショップを活用して最新の価値観マーケティング手法や消費者行動の知識を継続的にアップデートし、自社内で共有することも競争力の強化に欠かせません。
さらに、マーケティング手法の選定も慎重に行い、消費者の多様な価値観にマッチしたアプローチが求められます。適切なフレームワークを利用して情報を整理し、方向性を明確化しながら商品企画を進めることで、競合との差別化に繋がります。価値観の特性を理解し、製品設計から広告メッセージングまで一貫した戦略を実現することで、強い市場優位性を確立できるでしょう。市場調査の段階では、定量調査と定性調査を組み合わせることで顧客理解をより深めることができ、ターゲットとなる顧客の価値観に基づいた商品企画を推進するのが効果的です。これらの取り組みを継続し、社内外でセミナーなどを通じて知識を共有しながら実践を重ねていくことで、顧客との信頼関係を強化し、持続的なブランド価値の向上につなげることが可能となります。