アンケート調査を電話で行うメリットと注意点|他アンケート手法との違いも解説

アンケート調査には様々な手法が存在しますが、その中でも電話調査は、調査員が対象者と直接対話することで迅速に回答を収集できるリサーチ方法です。
この手法は、スピーディーな結果収集や、Web調査ではアプローチしにくい層へのリーチが可能といったメリットがある一方、質問内容の制約やコスト面での注意点も存在します。
この記事では、電話によるアンケート調査の基本的な知識から、他の調査手法との比較、外部へ依頼する際の選定ポイントまでを解説します。
電話によるアンケート調査とは?
電話によるアンケート調査とは、調査員(オペレーター)が調査対象者へ電話をかけ、質問を読み上げて口頭で回答を得る調査手法です。
調査会社が保有するコールセンターのシステムを活用し、用意されたリストや、コンピュータで無作為に発生させた電話番号をもとに架電して実施されます。
郵送やWebアンケートとは異なり、その場で直接対話しながら調査を進めるため、回答者の疑問に答えたり、質問の意図を補足説明したりできる点が大きな特徴です。
電話アンケート調査の目的と主な活用シーン
電話アンケート調査は、その迅速性と広範囲へのアプローチ能力から多様な目的で活用されます。
代表的な活用シーンとしては、報道機関による内閣支持率調査や選挙の情勢調査が挙げられ、リアルタイム性の高い世論の動向を把握するために用いられます。
ビジネスの領域では、市場調査の一環として特定の商品やサービスの認知度・利用実態を把握したり、既存顧客を対象とした満足度調査やニーズのヒアリングに利用されたりします。
また、BtoB調査において、特定の役職者や担当者など、ピンポイントで意見を聞きたい対象へのアプローチにも適している手法です。

電話でアンケート調査を行う5つのメリット

電話でアンケート調査を行うことには、他の手法にはない多くの利点があります。
調査対象者と直接対話できるため、スピーディーな回答収集だけでなく、回答のニュアンスを汲み取ったり、複雑な質問への理解を促したりすることも可能です。
また、郵送やWebといった他の手法では回答を得にくい層へもアプローチできる可能性があります。
オペレーターの適切な電話対応によって、質の高いデータを効率的に集められる点が、この手法の大きな魅力といえます。
短期間でスピーディーに結果を収集できる
電話アンケート調査の大きな利点は、その迅速性です。郵送調査のように発送や返送を待つ時間や、訪問調査のような移動時間が不要なため、調査開始から短期間で目標とするサンプル数を収集できます。電話調査は、対象者と直接つながればその場で回答が完了するため、迅速な回答収集が可能です。
Webアンケートもまた、調査票完成後すぐに配信でき、リアルタイムで回答を収集できるため、短期間での調査に適した手法です。新製品発表後の市場の反応調査や、緊急性が求められる社会的なテーマに関する問い合わせなど、いち早く結果を把握して次のアクションにつなげたい場合に、電話調査は有効な手段となります。

調査対象者と直接コミュニケーションがとれる
調査員が対象者と直接対話できる点は、電話調査の大きな強みです。
アンケートの回答だけでなく、声のトーンや話し方、言葉の選び方といった、数値化できない定性的な情報も得られる可能性があります。
これにより、回答の背景にある感情や熱量を推し量ることができます。
また、対象者が質問の意図を理解できなかった場合にその場で補足説明を行えるため、回答の精度向上にも寄与します。
あらかじめ用意された電話番号リストに基づき、特定の対象者と直接コミュニケーションを図ることで、より深いインサイトの獲得が期待できます。

複雑な質問でもオペレーターが補足説明できる
専門用語が含まれる質問や、選択肢の背景が複雑な設問であっても、対象者の理解度に合わせてオペレーターが補足説明できるのが電話調査の利点です。
例えば、新しいサービスや金融商品に関する調査で、一般には馴染みのない言葉が出てきた際に、その意味をかみ砕いて説明することで、対象者は内容を正しく理解した上で回答できます。
これにより、誤解に基づく回答や、質問の意味が分からず無回答になってしまう事態を防ぎ、データの信頼性を高める効果があります。
携帯電話での応答など、対象者がどのような状況で回答しているか分からない場合でも、口頭での丁寧なフォローが回答の質を担保します。

郵送やWebで回答しなかった層からも回収できる可能性がある
電話調査は、他の調査手法ではアプローチが難しい層から回答を得られる可能性があります。
例えば、パソコンやスマートフォンの操作に不慣れでWebアンケートへの回答が困難な高齢者層や、日常的にインターネットを利用しない層にも直接アプローチが可能です。
また、郵送物は確認せずに処分してしまう習慣のある人にも、電話であれば調査の協力依頼を直接伝えることができます。
RDD(ランダム・デジット・ダイヤリング)方式を用いれば、電話帳に載っていない番号も含めて無作為に抽出できるため、より幅広い母集団からの意見収集が実現します。

特定の回答者を指名して意見を聞ける
企業が保有する顧客リストや会員名簿などを活用し、特定の条件に合致する個人や担当者を指名して調査を行える点も、電話調査のメリットです。
例えば、「過去1年以内に特定の商品を購入した顧客」や「ある部署の責任者」といった、ピンポイントで意見を聞きたい対象に直接アプローチできます。
これは特にBtoB調査で有効であり、市場のキーパーソンから専門的な知見や業界動向に関する意見を深くヒアリングする際に力を発揮します。
一般的な営業目的のテレアポとは異なり、調査の趣旨を丁寧に説明し、信頼関係を築きながら回答を引き出す高度なスキルが求められます。

電話アンケート調査で注意すべき3つのデメリット
電話アンケート調査は多くのメリットを持つ一方で、実施にあたって注意すべきデメリットも存在します。
口頭でのやり取りという特性上、長時間の調査には向かず、質問数にも限りがあります。
また、ライフスタイルの変化により、そもそも電話に出ないターゲット層も増えています。
さらに、調査員を介することで回答に偏りが生じるリスクも考慮しなければなりません。
これらの点を理解した上で、調査設計や外部への依頼を検討することが重要です。
長時間や多くの質問には向いていない
電話調査は、対象者の時間を拘束する手法であるため、長時間の調査や多くの質問には適していません。
回答者の集中力や忍耐力には限界があり、調査時間が長引くと負担を感じさせ、回答の質が低下したり、途中で離脱されたりするリスクが高まります。
一般的に、電話調査の適切な所要時間は5分から10分程度とされています。
そのため、調査で得たい情報を絞り込み、設問数を厳選するとともに、一つひとつの質問を簡潔で分かりやすい表現にする工夫が不可欠です。
複雑なテーマを多角的に掘り下げるような調査には不向きな場合があります。

若年層など電話に出ないターゲットにはアプローチしにくい
ライフスタイルの変化に伴い、若年層を中心に、知らない番号からの電話に出ない傾向が強まっています。
固定電話を持たない世帯の増加や、スマートフォンの迷惑電話フィルタ機能の普及も、この傾向に拍車をかけています。
そのため、若年層をメインターゲットとする調査の場合、電話調査だけでは十分なサンプル数を確保することが困難なケースが増えています。
調査対象者の年齢層や特性によっては、電話調査のアプローチが有効に機能しない可能性を考慮し、Webアンケートなど他の手法との組み合わせを検討する必要があります。

回答に偏りが生じるリスクがある
電話調査は調査員が介在するため、回答に意図しない偏り(バイアス)が生じるリスクがあります。
例えば、調査員の質問の読み方や声のトーン、相槌の打ち方などが回答者の回答内容に影響を与えてしまう「インタビュアーバイアス」がその一つです。
また、対面している調査員に対して、本音とは異なり、社会的に望ましいと思われる回答をしてしまう「社会的望ましさバイアス」も発生しやすい傾向にあります。
こうしたバイアスを最小限に抑えるためには、全ての調査員が同じ手順で調査を進めるための徹底したトレーニングや、標準化されたスクリプトの準備が欠かせません。

電話調査と他のアンケート手法との違いを比較

アンケート調査の手法を選ぶ際には、それぞれの特性を理解し、調査目的や対象者に合わせて最適なものを選ぶことが重要です。
電話調査は、Webアンケート、郵送アンケート、訪問面接調査といった他の代表的な手法と、コスト、スピード、回答の質、アプローチできる対象者層などの面で異なります。
ここでは、それぞれの調査手法と電話調査を比較し、その違いを明らかにしていきます。
これにより、自社のリサーチ課題に最も適した手法選択の判断材料を提供します。
Webアンケート調査との違い
Webアンケート調査との最大の違いは、コストとアプローチできる対象者層です。
Webアンケートはシステムを利用して自動で配信・回収できるため人件費を大幅に抑えられ、低コストで実施できます。
一方、電話調査はオペレーターの人件費がかかるため、コストは高くなる傾向があります。
対象者層については、Webアンケートはインターネット利用者に限定されるのに対し、電話調査はインターネットをあまり利用しない高齢者層などにもアプローチ可能です。
また、電話調査ではオペレーターによる補足説明が可能ですが、Webアンケートではそれができないため、複雑な質問への対応力に差が出ます。

郵送(DM)アンケート調査との違い
郵送アンケート調査との主な違いは、スピードと回答者の負担感です。
電話調査は対象者と直接対話し、その場で回答を得られるため非常にスピーディーですが、郵送調査は発送から返送、データ化までに数週間単位の時間がかかります。
一方で、郵送調査は回答者が自身の都合の良い時間にじっくり考えて回答できるため、質問数が多かったり、複雑な内容だったりする場合でも対応しやすい利点があります。
電話調査は長時間にわたる回答を求めることが難しいため、短時間で完結する調査に向いています。
また、郵送調査は写真や図を見せながら質問できる点も電話調査とは異なります。

訪問面接調査との違い
訪問面接調査は、調査員が対象者のもとへ直接出向き、対面で聞き取りを行う手法です。
商品サンプルを試してもらいながら感想を聞くなど、リッチで質の高い情報を得られるのが最大の特長ですが、調査員の移動コストや人件費が非常にかさみ、最も高コストな手法といえます。
一方、電話調査は地理的な制約を受けずに広範囲の対象者にアプローチでき、訪問調査に比べてコストを抑えつつ、スピーディーに調査を実施できます。
どちらも調査員が介在するため、回答の質を直接確認できる点は共通していますが、得られる情報の深さと、調査にかかるコスト・時間のバランスが大きく異なります。

電話アンケート調査はこんなケースにおすすめ
これまでのメリット・デメリットや他の手法との比較を踏まえると、電話アンケート調査が特に効果を発揮するケースが見えてきます。
具体的には、迅速なフィードバックが求められる調査や、特定のターゲット層から直接、詳細な意見をヒアリングしたい場合に適しています。
ここでは、電話調査の活用が推奨される代表的な3つのケースを紹介し、どのような目的の調査でその真価を発揮するのかを解説します。
既存顧客への満足度調査やニーズのヒアリング
既に取引関係のある既存顧客に対し、サービスの利用満足度や新たなニーズをヒアリングする際に、電話調査は非常に有効です。
既知の相手からの電話であるため、対象者が応答してくれる可能性が高く、日頃感じていることや改善してほしい点などを直接、自分の言葉で話してもらいやすい環境を作れます。
Webアンケートの自由記述欄だけでは得られないような、より具体的で温度感のある意見を引き出すことができ、顧客ロイヤルティの向上やサービスの改善に直結する貴重なインサイトを得るのに適しています。

特定のテーマに対する認知度や意見の迅速な把握
新商品やキャンペーンの開始直後の認知度、あるいは社会的な出来事に関する世論の動向など、時間的な制約の中で素早く結果を把握したい場合に電話調査は最適です。
テレビCMの放映効果測定や、政治・選挙に関する情勢調査のように、市場や社会の反応をリアルタイムに近い形で捉える必要があります。
電話調査の持つスピード性を最大限に活かすことで、短期間で目標サンプル数を集め、迅速に集計・分析を行うことが可能です。
変化の速い状況において、的確な意思決定を行うための判断材料を素早く提供します。

BtoB市場におけるキーパーソンへの意見聴取
BtoB市場において、企業の決裁権を持つ役職者や特定分野の専門家など、多忙なキーパーソンへのアプローチにも電話調査は有効です。
こうした対象者はWebアンケートに回答する時間を確保しにくい場合が多いですが、電話であればアポイントメントを取って直接話を聞ける可能性があります。
専門性の高い内容であっても、訓練されたオペレーターが的確な質問と補足説明を行うことで、質の高い意見や業界の深い洞察を引き出すことが期待できます。
ニッチな市場の動向調査や、製品開発のための専門的な意見収集などで特に力を発揮します。

電話アンケート調査を代行依頼する際のポイント

電話アンケート調査を自社で実施するには、専門の設備や人員が必要となるため、多くは調査会社へ代行を依頼することになります。
その際、質の高い調査を実施し、信頼できる結果を得るためには、適切な委託先を選ぶことが極めて重要です。
ここでは、調査会社を選定する上で特に確認すべきポイントとして、料金体系の明確さ、業界での実績、そして調査の品質を左右するオペレーターの質の3つの観点から解説します。
料金体系は明確か?費用相場を確認しよう
電話アンケート調査を依頼する際には、まず料金体系が明確であるかを確認することが不可欠です。
見積もりを取得し、基本料金に含まれるサービス範囲(調査票作成支援、実査、集計など)と、オプションとなる作業を具体的に把握する必要があります。
料金は1コールあたりの単価や、調査完了1件あたりの単価で設定されることが多く、質問数や調査の難易度によって変動します。
複数の会社から見積もりを取り、サービス内容と費用を比較検討することで、おおよその費用相場を理解し、コストパフォーマンスに優れた委託先を選定できます。
調査したい業界での実績は十分か
委託先の調査会社が、自社の業界や調査したいテーマに関して豊富な実績を持っているかどうかも重要な選定基準です。
特定の業界に関する調査実績が多ければ、その業界特有の専門用語や商習慣、市場の動向について深い知見を持っている可能性が高いです。
これにより、より的確な調査票の設計や、対象者へのスムーズなアプローチが期待できます。
企業のウェブサイトで公開されている導入事例を確認したり、直接問い合わせて過去の具体的な調査実績を提示してもらったりすることで、その会社が自社の調査を成功させる能力を持っているか判断できます。
高品質な回答を得られるオペレーターがいるか
電話アンケート調査の成否は、オペレーターのスキルに大きく依存します。
対象者から協力を引き出し、円滑に調査を進めるコミュニケーション能力はもちろんのこと、質問の意図を正確に伝え、中立的な立場で回答を促す技術が求められます。
調査会社がオペレーターに対してどのような教育・研修プログラムを実施しているか、また、調査中の応対品質を管理する体制が整っているかを確認することは非常に重要です。
特に専門的な内容を扱うBtoB調査などでは、その分野に対応できる知識を持ったオペレーターが在籍しているかが、調査の品質を担保する上で鍵となります。

まとめ
電話アンケート調査は、調査員と対象者が直接対話することで、迅速に回答を収集できる有効な手法です。
短期間での結果収集、複雑な質問への対応力、Web調査などではリーチしにくい層へのアプローチといったメリットがあります。
一方で、長時間の調査には向かず、若年層にアプローチしにくい点や、調査員の介在によるバイアスの発生リスクといったデメリットも存在します。
これらの特性と、Webや郵送といった他の調査手法との違いを理解し、調査の目的や対象に応じて最適な手法を選ぶことが求められます。
外部へ委託する際は、料金体系、業界実績、オペレーターの質を総合的に評価し、信頼できるパートナーを選定する必要があります。
株式会社オノフでは電話調査を含む最適なリサーチ設計をご提案しています
電話アンケート調査は、スピード性や補足説明のしやすさなど大きな利点がある一方で、対象者属性や目的に応じた手法選定が欠かせません。
株式会社オノフでは、電話調査・Web調査・郵送調査・ホームユーステストなど、複数の調査手法を組み合わせた最適なリサーチ設計をご支援しています。
「どの方法が自社の課題に最も適しているのか知りたい」
「BtoBのキーパーソン調査や顧客満足度調査を効率的に実施したい」
といったご相談にも、豊富な事例とノウハウをもとに丁寧にサポートいたします。
調査のご依頼や、サービス資料のダウンロード、無料相談については以下よりお気軽にご覧ください。